本と珈琲の本棚
感想

明治時代の東京を舞台にした本書、久しぶりに心がほっこりする読書体験ができました。古い書店を訪ねてくる著名人たちの姿を通じて、人生の転機における「本との出会い」の大切さが静かに伝わってきます。 徳富蘇峰や岡本綺堂といった実在の人物たちが、ゆるやかに物語に溶け込んでいく描き方が素晴らしい。派手な展開ではなく、本屋の主人と訪れた客との対話の中で、各々が何を求めているのかが自然と見えてくるんです。日露戦争という時代の波動を背景としながらも、そうした大きな歴史の流れよりも、一人ひとりの内面との向き合い方を丁寧に描いている点が、この作品の魅力だと思いました。 嘱託社員として働く身としては、人生の岐路で本に救われた経験が何度もあるので、この作品の世界観に強く共感できました。活字を愛する者にとって、これ以上ない贈り物のような一冊です。気負わずに読み進められる文体も気に入りました。

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