雄一の本棚
芦屋山手 お道具迎賓館

芦屋山手 お道具迎賓館

高殿 円 早川書房 2026年2月5日

感想

茶碗の付喪神という設定だけで、もう惹き込まれてしまいました。信長が愛した幻の名品という歴史のロマンと、物に宿る魂という日本的な世界観が見事に融合しているんです。 読んでいて思ったのは、著者がお道具への向き合い方をとても丁寧に描いているということ。茶碗のシロさんが自分の来歴を思い出そうとする過程が、単なるミステリーではなく、ひとつの物語としての深みを持っていて。芦屋という土地の歴史と、古い館の雰囲気も相まって、ページをめくる手が止まりません。 何より良かったのは、文章が気軽に読めるのに、根底に流れる物への思想がしっかりしていることです。自営業で店の什器や道具に囲まれて暮らしていると、こういう「物の声を聞く」という姿勢が胸に響くんですよね。懐かしい日本の美意識を思い出させてくれるような一冊です。文庫本というフォーマットも気軽に読むには最適で、隙間時間にゆっくり楽しめました。

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