ゆーきの本棚
感想

長年の人生経験を積む中で、この本の存在は何度も耳にしてきた。ようやく手に取る機会を得たが、80年近く生きてきた自分だからこそ、その重みが余計に伝わってくる著作である。 ナチス強制収容所での経験を綴った本書は、単なる歴史記録ではない。極限の状況で人間とは何かを問い直す思索の書だ。著者が述べる通り、人間は同時に最悪と最善を持つ存在なのだ。ガス室という人類の闇と、その中にあってなお祈りを忘れない精神の輝きが対比される。 世代を超えて読み継がれているのが納得できる。若い頃に読むのと、人生の終盤で読むのでは印象が異なるはずだ。自分も幾つかの困難を経験してきたが、この本の前では局所的に見える。そしてそれでもなお、希望を持つことの大切さが身に沁みる。 新版で加筆されたという点も良い。著者の成熟した視点が加わることで、時間経過による新たな意味付けが生まれている。人生100年時代を迎えつつあるいま、全ての世代に勧めたい一冊だ。

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