ゆーきの本棚
感想

直木賞と山本周五郎賞をダブル受賞したというので、これは読まねばと思い手にとりました。80年も人生を重ねると、こうした話題作を逃すわけにはいきませんからね。 秋田の山々を舞台に、マタギという失われつつある生業を通じて日本の風土を描いた作品です。主人公・富治の人生は実に重厚で、山との関係、恋、そして社会との葛藤が層をなして迫ってくる。特に印象深いのは、狩猟という営みを通じて自然と向き合う人間の姿が、これほどまで魂に響くものかということです。 文章は格調高く、登場人物たちの息遣いが紙面から聞こえてくるようです。現代は失われた時代の風景が、克明に、そしてやさしく描かれている。わが人生の長さの中でも、こうした傑作に巡り合えることは本当に幸福です。 話題作だからこそ読む価値がある。若い世代にも、そして人生経験を積んだ者にも、深く響く傑作だと確信しています。定年後の読書人生の中で、これほど満足できた作品は久しぶりです。