邂逅の森
文藝春秋 | 2006/12/06
みんなの感想
話題の本は逃さない派なので、直木賞と山本周五郎賞のダブル受賞というニュースを見かけたときから気になっていました。いざ読んでみると、その期待値を見事に上回る傑作でした。 秋田の貧困な家に生まれた富治が、マタギとして山と獣に向き合う姿勢が本当に美しい。自営業の私たちにとって、生業に対する真摯な向き合い方って、どこか共通する部分があるんですよね。経済的な困難に直面しても、自分たちの仕事の本質を見失わないというか。 著者が描く失われゆく日本の風土や文化への眼差しが印象的です。登場人物たちの切実な葛藤を通じて、近代化の波の中で何が失われ、何が守られるべきなのかを静かに問いかけてくる。恋愛や人間関係も絡み合い、単なる時代小説の枠を超えた深い思考の作品になっています。 読み応え抜群で、一気読みしてしまいました。これからも話題作をチェックするときの指標になりそう。同時受賞という栄誉も納得できる、本当に優れた一冊です。
直木賞と山本周五郎賞をダブル受賞したというので、これは読まねばと思い手にとりました。80年も人生を重ねると、こうした話題作を逃すわけにはいきませんからね。 秋田の山々を舞台に、マタギという失われつつある生業を通じて日本の風土を描いた作品です。主人公・富治の人生は実に重厚で、山との関係、恋、そして社会との葛藤が層をなして迫ってくる。特に印象深いのは、狩猟という営みを通じて自然と向き合う人間の姿が、これほどまで魂に響くものかということです。 文章は格調高く、登場人物たちの息遣いが紙面から聞こえてくるようです。現代は失われた時代の風景が、克明に、そしてやさしく描かれている。わが人生の長さの中でも、こうした傑作に巡り合えることは本当に幸福です。 話題作だからこそ読む価値がある。若い世代にも、そして人生経験を積んだ者にも、深く響く傑作だと確信しています。定年後の読書人生の中で、これほど満足できた作品は久しぶりです。
直木賞と山本周五郎賞のダブル受賞という触れ込みに惹かれて手に取りました。39歳になって、人生の選択肢の重さをより理解するようになったせいか、この作品の深さが心に響きました。 秋田の貧しい小作農に生まれた主人公・富治の人生は、一つの選択によって大きく揺さぶられます。マタギとしての山への思い、身分制度による制約、そして愛する者との関係。どれも譲れない想いなのに、すべてを手に入れることはできない。その葛藤の描き方が本当に丁寧です。 著者は消えていく日本の風土—マタギという伝統的な生業、秋田の山々、そして失われつつある生き方—を克明に記録しています。その中で人間ドラマが紡がれる構成が素晴らしい。時代背景についても私たちが教科書で習う日本の変遷が、一人の男の人生を通してこんなにも生々しく伝わってくるのかと驚きました。 文庫本で読みやすいのも嬉しいポイント。仕事で疲れた日も、富治の人生に引き込まれて一気読みしてしまいました。感動巨編というのは伊達ではありません。迷っている方には自信を持ってお勧めできる一冊です。