ゆーきの本棚
薔薇の名前[完全版] 上

薔薇の名前[完全版] 上

ウンベルト・エーコ / 河島 英昭 / 河島 思朗 東京創元社 2025年12月25日

感想

話題の本だということで、思い切って手に取ってみました。いやはや、これは骨のある本ですな。 中世の修道院で次々と起こる不可解な死。一見すると古典的なミステリーの骨組みですが、ウンベルト・エーコという知識豊かな著者の手にかかると、単なる謎解きに留まらないものになってしまう。あちこちに中世の思想史や記号学が絡み合い、読み進めるたびに頭を使わせられます。 若い頃なら、こうした知的な難しさに圧倒されていたかもしれません。しかし八十年生きてくると、話の奥行きが見えて、かえって面白い。登場人物たちの議論も、時代の空気も、なんとなく腑に落ちるのです。 完全版というのは素晴らしい判断で、隠されていた部分を読めるのは良い。上巻だけで既に引き込まれていますから、下巻が待ち遠しい。このごろ出版業界は懐かしい傑作を新しく紹介してくれるが、こういう本こそ、今一度多くの人に読んでもらう価値がある。