みんなの感想
これまで積極的には手を出していなかった歴史冒険小説の領域に、遂に足を踏み入れてしまいました。世界中で支持されているという評判と、完全版という響きに惹かれて。 実際に開いてみると、中世修道院という舞台設定の精密さに圧倒されます。知識の迷宮としての文書館、そこで起きる連続殺人事件。著者の知識の深さがひしひしと伝わってきます。管理職として日々の細部に注視する立場にあるせいか、細密な描写と緻密な構成が心地よく感じられました。 ただし、正直に申し上げると難しい部分もあります。章立てや登場人物の把握に、相応の集中力が必要です。慎重に選ぶ私としては、一度手に取ったら相応の時間投資が必要であることを覚悟する必要があります。ですが、その代価に得られる知的充実感は確かなものです。 上巻を終えた時点で、既に下巻への道は開かれています。謎解きの過程を楽しみながら、世界文学の傑作とされるゆえんを実感していきたいと思っています。
話題の本だということで、思い切って手に取ってみました。いやはや、これは骨のある本ですな。 中世の修道院で次々と起こる不可解な死。一見すると古典的なミステリーの骨組みですが、ウンベルト・エーコという知識豊かな著者の手にかかると、単なる謎解きに留まらないものになってしまう。あちこちに中世の思想史や記号学が絡み合い、読み進めるたびに頭を使わせられます。 若い頃なら、こうした知的な難しさに圧倒されていたかもしれません。しかし八十年生きてくると、話の奥行きが見えて、かえって面白い。登場人物たちの議論も、時代の空気も、なんとなく腑に落ちるのです。 完全版というのは素晴らしい判断で、隠されていた部分を読めるのは良い。上巻だけで既に引き込まれていますから、下巻が待ち遠しい。このごろ出版業界は懐かしい傑作を新しく紹介してくれるが、こういう本こそ、今一度多くの人に読んでもらう価値がある。
知の巨人エーコの傑作として世界中で讃えられている本書だからこそ、余計に期待値が上がってしまいました。確かに中世の修道院を舞台とした設定の独創性や、複雑に絡み合う謎解きの構想は見事です。知識人としての著者の学識の深さも随所に感じられます。 ただ、正直なところ上巻を読み進める中で、物語への没入感を失いかけてしまいました。本論に入るまでの前置きが極めて長く、また歴史的背景や宗教的象徴の説明が過剰に感じられるのです。ミステリとしての緊張感よりも、学術的な講釈が優先されているような印象を受けました。 新社会人として忙しい毎日の中、まとまった時間を作って本書に向き合おうと決めたのですが、その努力に見合う読書体験が得られなかった点が残念です。もちろん下巻への期待は残っていますが、現時点では星を付けるなら低めにならざるを得ません。評判の高さと実際の読み心地にはギャップがあるというのが、率直な感想です。
最近登録された他の本の感想
2026年09月27日
古稀を迎えた今、これまで手に取ることのなかった分野の本に興味が湧くようになりました。この『ビジュアル図鑑 錬金術の歴史』もそのひとつ。科学と魔法の境界で揺らめいた錬金術が、実は人類の精神的営為の壮大な記録であることに目を開かされました。 著者の解説は実に明快です。難解とされる錬金術の理論が、古代エジプトから現代にいたるまで、どのように変容し、世界各地でどのように受け継がれたかが、段階的に理解できます。西洋だけでなく、イスラム世界や日本を含むアジアの錬金術にも言及している視点の広さに感心しました。 何より素晴らしいのは豊富な図版です。古い装本や図解、錬金術師たちの記録された肖像画——これらを眺めていると、当時の人々の知的好奇心と想像力の豊かさが伝わってきます。ボランティア活動で若い世代と関わる機会も多いのですが、こうした本を通じて、時代を超えた人間の営みについて考えを深めたいと思います。知的興奮に満ちた一冊です。
2026年09月26日
警察小説ということで手に取ってみたんですが、正直なところ期待値と現実のギャップが大きかったというのが素直な感想です。 二つの視点から事件を描くという構成自体は面白いアイデアなんですよね。刑事である夫と、誘拐された妻の両面から真相が明かされていくという設定には惹かれました。ただ、実際に読み進めると、その二つの視点がうまく絡み合っているとは言い難くて。むしろ別々に進行しているような感覚で、物語全体が散漫になってしまった印象を受けました。 キャラクターの心理描写も浅めで、特に妻の心情の変化が唐突に感じられる場面が何度かありました。フリーランスの身ですから、ながら読みすることもあるんですが、それでも物語に引き込まれる力が欲しかったところです。 本格警察小説を謳っているなら、もっと事件解明の過程に説得力があってもいいんじゃないかな。新潮文庫の装いも手伝って、期待してしまったからかもしれません。別の著者の作品を試してみたくなりました。
2026年09月25日
映画化されたこの作品、話題になってたから気になって読んでみました。前作「アプリ婚連続殺人事件」の後日譚というストーリー設定がめっちゃ惹かれる。 恋人が忽然と姿を消してしまうところから始まるんですが、その先の展開がほんとにぐいぐい引き込まれます。孤島を舞台にしたマッチングツアーという設定も現代的だし、何か嫌な予感がずっとついて回る。登場人物たちが本音と建前で演じ分けてる感じとか、恋愛という感情の複雑さを浮き彫りにしてくるのが上手いなって思いました。 ミステリー要素とサスペンスが上手に絡み合ってて、ページをめくる手が止まりません。ただ、終盤の展開が少し急ぎ足かなという印象も。もう少し丁寧に描き込まれてたら、さらに深い作品になったんじゃないかな。それでも十分引き込まれる面白さがあるし、映画との違いも確認したくなりますね。エッセイも好きですが、こういう謎解き系の小説も大好きです。
2026年09月25日
桧山貴志 4年前妻を殺されてる、カフェの店長 愛美 貴志の娘 祥子 妻 早川みゆき 愛美が通う保育園の先生、祥子の友人 福井健 貴志の店のバイト 仁科歩美 バイト 鈴木裕子 バイト 三枝利幸 警察 長岡 警察 沢村和也 妻を殺した少年、B 早紀 沢村の妹 八木将彦 妻を殺した少年、A 丸山純 妻を殺した少年、C 前田澄子 義母 貫井哲郎 ライター 桜井 沢村が送られた施設の園長 加藤友里 沢村の幼馴染、彼女でもあった 相沢秀樹 弁護士 第一章 カフェの近くで沢村が殺された。祥子は事件の1ヶ月半前に500万引き出していた。なぜ? 祥子は遊ぶ金欲しさに入った当時13歳の沢村らに殺された。 貴志は民事訴訟を起こさず、愛美を育て平穏な日常を取り戻すことを選んでいた。澄子のもとにも刑事がきてた。沢村たちが更生したか知りたいと思う。 第二章 沢村が送られた施設へ。沢村は施設では良い子だった。更生、反省はしたのか。 沢村らが住んでた街へ。なぜ離れた自分の街に来て犯罪をしたのか。沢村らの中学へ。貫井に会う。八木が友人に送った年賀状を見せてもらう。反省はなさそう。 貴志は沢村の仲間、友里らに襲われる。友里から沢村のことを聞く。殺される前に別れを切り出された。本当の贖罪をするからと。沢村は八木を探していた。 八木の家へ。本人は不在。家族も知らないと。 第三章 相沢が貴志のもとへ。八木の家に行ったことを咎める。 加藤と八木のいる店へ。1人で店にはいることに。いなかった。帰る 途中に駅で事故。刑事からそれが丸山だったと聞く。 八木から電話。見せたいものがあると呼び出される。愛美がひきつけを起こし、八木に会えず。八木が殺される。 第四章 三枝は丸山から事件のこと、沢村のことを聞く。 貴志のもとにビデオが届く。少年3人が幼児に悪戯する映像。少年は沢村、八木、丸山。 丸山に話を聞く。撮影者は不明。祥子の事件の前に八木のもとにビデオとともに祥子を殺せと届く。首謀者を探す。祥子の手帳を見る。みゆきの名前がない。なぜ?群馬県に住む小柴晴彦から葬儀の案内の葉書。小柴に会いにいく。小柴の娘が祥子の友達。4歳のときに中学生に殺された。祥子はなぜ高校に入る前に小柴に会いに来たのか。 祥子が中3の時女子少年院で過ごしていたことを知る。祥子とみゆきは高校生に絡まれ、テレクラを使いオヤジ狩りをした。みゆきがそこから逃げようととしたところ、オヤジ狩りの被害者に見つかり、祥子が助けようとしてナイフで刺して死なせてしまう。 第五章 丸山のところに三枝らはいく。長岡が襲われる。 祥子が殺した被害者の遺族のもとへ。子供の病気に対し小柴の名前で1000万の寄付があった。祥子? 丸山から電話。愛美らを人質に立て籠り。 沢村らのビデオを撮ったのは歩美。歩美は祥子が殺した被害者の娘。歩美と丸山は繋がっていた。歩美が裏切り、助かる。 終章 相沢は祥子の幼馴染を殺した少年で、祥子が鑑別所にいったときに祥子に会っていた。祥子は相沢に被害者遺族に謝罪にいくよう言った。応じない相沢を脅迫し500万を得る。歩美の治療費。歩美に祥子の今を匿名で教えたのは相沢。祥子は罪に向き合っていた。
2026年09月24日
著者の突然の訃報を知ったのは、テレビのニュースだったと記憶しています。その直後、「最後のエッセイ集」という言葉に惹かれて、このあたらしい新装版を手に取ってみました。 日常のなかで見落としがちな小さなことへの向き合い方が、これほど丁寧に、そして温かく描かれている作品は珍しいと思います。手袋を探すというささやかな出来事から始まる物語たちは、一見ちょっとした話のようですが、読み進めるうちに、人生全体を見つめ直させてくれるような深さを感じました。 新装版は文字が大きく、活字が得意でない日にも無理なく読み進められるのが嬉しい工夫です。カバーの絵も柔らかく優しい雰囲気で、手元に置いておきたくなるデザイン。著者の優しい眼差しが隅々まで行き届いたエッセイ集だからこそ、装丁もそれに相応しいものになっているのだと思います。 主婦として生活していると、日々の細かなことに疲れてしまう瞬間があります。そんなときに、この本を開くと、心がふわりと軽くなる。著者と一緒に、ありふれた人生のなかに美しさを探す時間は、何物にも代え難い贈り物です。
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