ゆーきの本棚
感想

最近は話題の本をチェックするようにしているのだが、この『望郷』も日本推理作家協会賞を受賞したということで手に取ってみた。島という閉ざされた世界を舞台にした連作短編集である。 読んでみると、島に生まれ育った人々の複雑な心情が丁寧に描かれている。故郷を憎みながらも愛し、離れながらも心が引かれてしまう——そうした葛藤は人生経験の長い者にはよく理解できるところだ。特に「海の星」は選考委員の北村薫氏も絶賛しているだけあって、巧みな構成と逆転の妙が光っている。 ただ、全体としては可もなく不可もないというのが率直な感想である。題材は確かに興味深く、文章も上質だが、どの短編も似たようなテーマを繰り返している印象が拭えない。同じ島を舞台にした話が続くと、やや単調に感じてしまう。魚料理などの細かな描写は確かに味わい深いのだが、それだけでは物足りなさが残る。 80年近く生きていると、こうした郷愁の物語には共感しやすいはずなのだが、この作品からはそこまで心を揺さぶられませんでした。良い本ですが、特に強く薦めようとは思いません。

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