れんの本棚
感想

話題作という触れ込みで手に取った一冊です。実際の事件をモチーフにしながら、ノンフィクションとフィクションを織り交ぜるという構成は、確かに興味深い試みだと思います。 ただ読み進めてみると、その野心的な設定の割に、どちらの視点も中途半端な印象を拭えませんでした。事件そのものの謎解きとしては物足りなく、かといって人間ドラマとして深掘りされているわけでもない。二つの物語が融合する瞬間に何か大きな発見があるのかと期待していただけに、その辺りが今一つ活かしきれていない感じがします。 登場人物たちの内面描写は丁寧なのですが、複数の語り手による構成のせいか、全体像が曖昧に見えてしまう。キャリア層の自分としても、権力と表現の自由という重いテーマを扱っているわけですから、もっと鮮烈な問題提起があってもいいのではないかと。 話題作をチェックする身としては一度は読んでおきたい作品ではありますが、正直なところ「もう一度読み返したい」という強い衝動には駆られませんでした。