映画ノベライズ 岸辺露伴 ルーヴルへ行く
集英社 | 2023/05/26
みんなの感想
荒木飛呂彦の『ジョジョの奇妙な冒険』は漫画文化の象徴的存在だが、その中でも特に人気の高い岸辺露伴というキャラクターが映画化され、さらに小説化されたというのは興味深い試みだ。実写映画は話題になっていたので、小説版がどう仕上がっているのか気になって手に取った。 正直なところ、映画ノベライズということで期待値はそこまで高くなかったのだが、いい意味で裏切られた。露伴がルーヴル美術館に向かうというこの舞台設定自体が素晴らしく、パリという異国を舞台に、漫画家という職業のリアリティを保ちながら、超常現象へと話を展開させていく構成が見事だ。原作の持つ独特の世界観が、文章を通しても十分に伝わってくる。 青年時代の淡い思い出が現在と交差する場面の切り取り方も良く、41歳の自分としては登場人物たちの時間の経過や心理描写に共感できる部分が多かった。映画を見ていない状態でも十分読み応えがあり、むしろ小説化することで深掘りされたキャラクター描写が新たな魅力を引き出している。話題作だからこそ手に取った本だが、その評判に値する完成度だと確信した。
ジョジョの奇妙な冒険の岸辺露伴を主人公にした実写映画のノベライズということで、興味半分で手に取ってみたんですけど…正直ちょっと残念でした。 漫画版やアニメ版の露伴のキャラクターの魅力ってすごく濃いじゃないですか。それが映画化されるときにどう表現されるのか、小説ではどんな風に描かれるのかなって期待してたんです。でも読んでみると、小説化による説明不足というか、映画を既に見てることが前提になってる感じがして、初見だと世界観に入り込みにくいんですよね。 特に「黒い絵」という怖さを売りにしてるはずなのに、文字だけだと恐怖の伝わり方がイマイチ。映像だからこそ成立する表現を無理に文章にしたんでしょうけど、それが仇になってる気がします。ルーヴル美術館での冒険という設定は面白いのに、もったいないというか。 映画を見た人用の補完資料くらいに考えたほうが良さそうです。
映画化された作品の小説化というと、どうしても二次的な印象を持ちがちだが、本作はそうした先入観を見事に払拭してくれた。 荒木飛呂彦の世界観を、ノベライズという形式で再構築することの難しさを理解していたので、購入時は正直な所、半信半疑だった。しかし読み始めると、漫画家・岸辺露伴というキャラクターの深さと、ルーヴル美術館という実在の舞台が織りなす独特の緊張感に引き込まれた。 古い慕情と現在の執筆活動が交錯する中で、「黒い絵」という謎の存在が浮かび上がる構成は実に巧妙だ。映画とは異なる表現手法だからこそ可能な、心理描写の細やかさが随所に光っている。地下倉庫Z-13へと潜り込む緊迫感も、小説ならではの没入感で充分に伝わってくる。 フリーランスの身として、仕事に疲れた時にこうした奇想天外な物語に触れるのは貴重だ。軽くはない内容ながらも、読後の満足度は高い。慎重派の自分が躊躇なく薦められる一冊である。
話題の映画化作品ということで、つい手に取ってしまいました。荒木飛呂彦の人気漫画『ジョジョの奇妙な冒険』のスピンオフをノベライズした作品です。 正直なところ、映画を見ていないので比較はできませんが、小説として読むと、映像化ありきの構成が目立ちます。テンポよく進む展開は映画的で読みやすいのですが、その分、紙の上だからこそ表現できるはずの心理描写や世界観の奥行きが物足りなく感じられました。 とはいえ、岸辺露伴というキャラクターの魅力は十分に引き出されており、彼の執着心と知識欲、そしてルーヴル美術館という舞台設定は、確かに興味深いものです。美術と怪奇、恋心と執念が絡み合うストーリーは、オリジナル漫画のファンなら楽しめるでしょう。 ただ、小説として独立して成立しているかというと、やや疑問が残ります。映画を先に見た方が、より味わい深く読めるのではないかと感じました。映画化作品の小説版として、無難にまとまった一冊です。