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容疑者Xの献身

容疑者Xの献身

東野 圭吾 文藝春秋 2008年8月1日

感想

直木賞受賞作ということで、ずっと気になっていたこの作品をようやく手にした。東野圭吾のガリレオシリーズ初の長篇ということだが、正直なところ期待値とのズレを感じた。 物語の枠組み自体は秀逸だ。天才数学者が完全犯罪を仕掛け、かつての友人である物理学者がそれに挑むという構図は、確かに知的興奮を約束している。実際、中盤までの緊張感は見事に構築されている。 だが読み進めるにつれ、やや人工的な感覚が拭えなくなった。登場人物たちの動機付けに説得力を感じ切れず、特に石神というキャラクターの行動が、数学的な美しさの追求という設定に比べて、どこか図式的に見えてしまう。また、犯罪トリックの巧妙さより、その背後にある人間関係の葛藤がもっと深掘りされてもよかったのではないか。 もちろん、エンタメ小説としての完成度は高く、一気読みの面白さは確保している。ただ、この種の傑作として記憶に残るほどの余韻や深さには、私個人としては至らなかった。フリーランスとして様々な分野の本を読む身だからこそ、この普通という評価は決して悪くはなく、むしろ誠実な感想だと思っている。

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