れんの本棚
感想

恩田陸の『鈍色幻視行』は、話題作『夜果つるところ』の謎に迫るメタフィクショナルな傑作だ。クルーズ船という密閉空間で、映画化が三度も頓挫した"呪われた"小説をめぐって、関係者たちが次々と新事実を語り出す構成は、読む者を完全に引き込む。 何度も映像化が失敗に終わった理由は何なのか。その本に隠されたものは何か。著者・梢が関係者の証言を集める過程で、読者自身も物語の真実へと導かれていく快感がたまらない。登場人物たちの語りが重なり合い、矛盾し、新たな解釈が生まれる様は、まさに知的興奮の連続である。 中盤で梢が感じた「ある違和感」から物語が急加速する瞬間は、この年代の読者だからこそ味わえる深い満足感がある。複層的な物語構造、文学的な問い、そして予想外の結末まで、すべてが見事に機能している。ビジネス書ばかり読んでいた人間にもぜひ勧めたい、ここ数年で最高峰の小説だ。

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