幼な子の聖戦
集英社 | 2023/01/20
みんなの感想
芥川賞候補作ということで手に取ってみました。「幼な子の聖戦」は、東京で失意を味わった男が故郷で村議になるも、政治の現実に直面する――という設定だけで既に心をつかまれました。 読み始めると、史郎という主人公の葛藤が本当に切実で。理想と現実のギャップ、人間関係の複雑さ、そして道徳的な選択肢に追い詰められていく様子が、静かながらも息苦しいほどの緊迫感で描かれています。村という限定的な世界設定だからこそ、逃げ場のない人間ドラマが際立つんですね。 収録されている「天空の絵描きたち」も秀逸です。高所での危険な仕事に携わる人たちの心理と、その中での人間関係が丁寧に描かれていて。正直なところ、どちらがメイン作品でもいいくらいの完成度です。 全体的に、著者の人間観察の深さが素晴らしい。話題作というだけでなく、本当に質の高い短編集だと思います。41歳になると、こういう人間ドラマの重みが心に響くようになったのかもしれません。ぜひ多くの人に読んでほしい一冊です。
芥川賞候補作ということで期待を持って手に取りました。表題作「幼な子の聖戦」は、地方政治の泥臭さと個人の良心の葛藤を描いた作品で、その点は興味深い。主人公が追い詰められていく心理描写には説得力があり、物語として引き込まれました。 ただ、結末に向かうにつれて、どこか急速に物事が進みすぎているような印象を受けたのは正直なところです。もう少し丁寧に積み重ねられていれば、より深い余韻が残ったのではないかと感じます。 収録されている「天空の絵描きたち」は、ビル窓拭き職人の日常と緊張感を描いた作品で、地味ながら確かな存在感があります。こちらは短編としてはまとまりが良いですね。 特に感銘を受けたわけでもなく、不満が残ったわけでもない、といった感覚です。芥川賞候補作としてのプレゼンテーションは理解できますが、個人的には「確かに良い作品だが、それ以上ではない」というのが正直な評価になってしまいます。文学好きなら読んで損はありませんが、特に急いで読む必要もないかもしれません。
芥川賞候補作ということで、さっそく手に取ってみました。やはり話題作は読んでおきたいですからね。 表題作の「幼な子の聖戦」は、心理描写がとても深くて引き込まれました。故郷に帰った男性が、理想と現実の狭間で揺れ動く様子が胸に迫ります。新興宗教への失望、村の政治への関わりなど、人生を左右する選択の重みが伝わってくる。68年生きてきた私だからこそ、こういった葛藤の描き方に共感できるのかもしれません。 収録されているもう一篇「天空の絵描きたち」も素晴らしい。ビルの窓拭きという日常の中の緊張感を、こんなに生き生きと描けるものかと驚きました。若い世代の仕事への向き合い方が感じられて、私たちの時代とは違う生き方があるんだなと気づかせてくれます。 文庫本というのも読みやすくていい。パート帰りの休みの日に、じっくり読むのに最適です。話題作を読むことで、今の文学がどこに向かっているのかが見える気がします。