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幼な子の聖戦

幼な子の聖戦

木村 友祐 集英社 2023年1月20日

芥川賞候補作ということで手に取ってみました。「幼な子の聖戦」は、東京で失意を味わった男が故郷で村議になるも、政治の現実に直面する――という設定だけで既に心をつかまれました。 読み始めると、史郎という主人公の葛藤が本当に切実で。理想と現実のギャップ、人間関係の複雑さ、そして道徳的な選択肢に追い詰められていく様子が、静かながらも息苦しいほどの緊迫感で描かれています。村という限定的な世界設定だからこそ、逃げ場のない人間ドラマが際立つんですね。 収録されている「天空の絵描きたち」も秀逸です。高所での危険な仕事に携わる人たちの心理と、その中での人間関係が丁寧に描かれていて。正直なところ、どちらがメイン作品でもいいくらいの完成度です。 全体的に、著者の人間観察の深さが素晴らしい。話題作というだけでなく、本当に質の高い短編集だと思います。41歳になると、こういう人間ドラマの重みが心に響くようになったのかもしれません。ぜひ多くの人に読んでほしい一冊です。