れんの本棚
感想

芥川賞候補作ということで手に取ったが、予想以上の傑作だった。表題作の「幼な子の聖戦」は、地方政治の泥沼に足を踏み入れた主人公の内面的な崩壊を緻密に描いている。理想と現実のギャップ、そして善意すら腐食させる権力構造への怒りが、読んでいて痛切に伝わってくる。 もう一編の「天空の絵描きたち」も秀逸だ。ビルの窓拭きという日常では見落とされる仕事に従事する人間関係の機微が、こんなにも深く、美しく描けるのかと驚いた。過酷な環境下での連帯感と孤独が同居する世界観は、仕事人生を重ねてきた自分にとって特に響いた。 著者の人間観察の深さと表現力は本当に秀逸。この作品がなぜ候補作に選ばれたのかが納得できるレベルで完成度が高い。同じ働く大人として、これは読んでおくべき一冊。文学的価値だけでなく、我々の社会や人生について考えさせられる、そんな傑作である。