雄一の本棚
感想

この本を手にとったのは、世間一般で語られる「正義」や「道徳」というものに、やや違和感を感じていたからです。54年生きていると、正論を振りかざす人ほど実は周囲を傷つけていたり、逆に要領よく立ち回る人が得をしているという現実をさんざん目にしてきます。 著者は外交官として激動の人生を歩み、さらには拘置所での極限体験も経ている。そうした経歴から導き出された人間論だからこそ、空論ではなく重みがあります。人間の本質が基本的に「悪」であるという視点は一見ネガティブですが、むしろこれを受け入れることで、無駄なストレスから解放されるという論理は説得力があります。 ただし、注意深く読む必要はあります。この手の本は時に、現状肯定や諦観へと傾きやすいからです。著者の論旨をしっかり咀嚼しながら、自分の人生にどう活かすかを考えることが大切でしょう。 人間観に一定の疑問を持つ中高年層には、確実に価値のある一冊だと思います。新書という手軽なフォーマットも、じっくり読み返すのに適していました。

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