雄一の本棚
新装版 夜中の薔薇

新装版 夜中の薔薇

向田 邦子 講談社 2016年2月13日

感想

新装版『夜中の薔薇』を手に取ったのは、著者が急逝した後も多くの読者に愛され続けているという噂を聞いたからです。半ば恐る恐るページをめくりましたが、その優しさと力強さに引き込まれてしまいました。 手袋の話から始まるエッセイ集ですが、これは単なる身の回りの出来事を綴ったものではありません。著者は、日常の細部に潜む人間の本質を見つめ、それを素直な言葉で表現しています。54年間の人生経験を積んだ私だからこそ、その叙述の奥行きがよく理解できるのだと思います。 何度も立ち止まって同じ段落を読み直してしまいました。それは著者の「凛として自己主張を貫いた」人生姿勢が、どこか自分自身の歩みとも重なって感じられたからです。また、ありふれた人生への眼差しの優しさには、思わず胸が熱くなりました。 新装版は文字が大きく、装丁も品良くまとめられています。丁寧に作られた本だという印象です。著者最後のエッセイ集だからこそ、今このタイミングで出会えた喜びをかみしめながら読み進めました。多くの人に読まれるべき一冊だと確信しています。

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