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感想

直木賞受賞作ということで手に取った一冊だが、これは実に味わい深い作品だ。江戸の裏長屋を舞台に、人生の淀みに足をすくわれた庶民たちの姿をつづった連作短編集である。 著者の筆致は丁寧で、登場人物たちの心の機微をじつに見事に描き出している。金銭に困窮した者、人情に揺れる者、社会の隅に追いやられた者——そうした人々が、それでもなお必死に生きようとする姿が胸に響く。特に印象的だったのは、一見すると卑劣に見える行為も、その人なりの事情や葛藤があることを丁寧に教えてくれる点だ。 八十を過ぎて読むと、人生というものがいかに複雑で、簡単には判断できないものかがよく分かる。登場人物たちの苦しみや願いが、自分たちの世代が歩んできた時代とも重なって見える。文庫サイズで読みやすいのも良い。話題の作品でありながら、腰を据えて読む価値のある一冊だと思う。

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