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流れる島と海の怪物

流れる島と海の怪物

田中 慎弥 集英社 2023年6月26日

感想

話題作『共喰い』から10年、田中慎弥が再び下関を舞台に描いた新作。その存在を知った時点で、これは読むべきだと直感しました。 本書は謎めいた二人の姉妹との出会いから始まる、濃密な家族の物語です。主人公がなぜこの屋敷に連れてこられたのか、その理由が出生にまつわる秘密へと繋がっていく構成は秀逸。血と家族についての問い掛けが、神話的な世界観と重なり合い、ページを進めるごとに深い沼へと引き込まれていく感覚があります。 田中慎弥の文体は相変わらず冴えていて、一見穏やかな日常の描写の中に不穏さを潜ませる手法が実に巧妙。登場人物たちの心理描写も細密で、彼らが何を隠しているのか、どう絡み合っているのかを探りながら読み進めるのが醍醐味です。 少年と少女の関係性、そして家族という枠組みの中で何が起こるのか。最後まで目が離せませんでした。文学的な深さと物語性を兼ね備えた、見事な一冊です。同年代の読者にぜひお勧めしたい作品。

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