流れる島と海の怪物

流れる島と海の怪物

田中 慎弥

出版社:集英社 出版年月日:2023/06/26

集英社 | 2023/06/26

4.50
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みんなの感想

江戸時代の実在の裁判事件を題材にした本作は、管理職として組織内の紛争処理に携わる身として、非常に興味深く読むことができました。 宝暦五年、美濃国郡上からやって来た一行が引き起こしたこの裁判劇は、単なる歴史冒険譚に留まりません。権力構造と個人の正義がぶつかる緊張感、隠密裏に進む調査、証人たちの証言――現代の組織内問題解決にも通じる普遍的な人間ドラマが展開します。 著者の筆致は明確で、複雑な事件構図を丁寧に紡いでいきます。登場人物たちの動機や葛藤も丹念に描かれており、単なる事実の羅列ではなく、歴史小説として深い味わいがあります。 一気読み必至という惹句に偽りなし。平日の夜間に読み始めたら、つい徹夜してしまいました。最近は話題作をチェックすることが習慣でしたが、本作はその期待値を十分に上回る傑作だと感じます。人文知識を深めたい方、組織における権力と正義の問題に関心のある方に、心からお勧めできる一冊です。