れんの本棚
感想

話題になっていた本ということで手に取ってみたが、これは本当に良い作品だ。アメフト部という題材を通じて、高校生が直面する自分探しの葛藤が、実に生々しく描かれている。 敗北の後、目的を失い宙ぶらりんになる主人公・アリの心情がリアルで、41歳の自分もかつて経験した、あの何ともいえない閉塞感を思い出させられた。勉強にも身が入らず、かといって何をしたいわけでもない——そうした青春期特有の不安定さが、著者の筆によって見事に浮き彫りにされている。 特に印象的だったのは、「人にぶつかっていないと、自分が生きているかどうかよくわからなくなる」というフレーズだ。これは高校生だけに限った感覚ではなく、社会人になった今でも通じるものがある。仕事の中で常に何かと向き合い、ぶつかり合うことで初めて自分の存在を確認できる——そんなことを考えながら読んでいた。 著者の初小説とは思えないほど、心理描写が深い。青春の苦さと喜びが共存する世界観に引き込まれ、一気読みしてしまった。大人が読んでも響く、そんな秀作である。