てつの本棚
よき時を思う

よき時を思う

宮本 輝 集英社 2023年1月26日

感想

宮本輝の作品を久しぶりに読みました。教員生活も長くなると、人生の重みを感じる物語に惹かれるようになるんですね。 この小説は、九十歳の祝いに開かれる晩餐会を軸に、祖母・徳子の人生が丁寧に紐解かれていきます。戦時下での結婚、夫の死、その後の選択——歴史の波に翻弄されながらも、なぜ今この時に光輝く晩餐会を開くのか。その答えを探る過程で、一人の女性がどのように人生を歩み、どのような思いで家族を見守ってきたのかが見えてくる。 特に印象的なのは、祖母が「よき時」をどう捉えているかという視点です。失われた過去ではなく、今この瞬間、そして未来への希望——その転換が、家族との関係性をも変えていく。授業で人生観について話す機会が多い身として、この物語の中にある「いのちの肯定」みたいなメッセージが胸に響きました。 美しい食卓描写も相まって、読み終わった後に家族との時間を大切にしたくなる。そういった温かさを持った感動作です。

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