よき時を思う
集英社 | 2023/01/26
みんなの感想
宮本輝の作品を久しぶりに読みました。教員生活も長くなると、人生の重みを感じる物語に惹かれるようになるんですね。 この小説は、九十歳の祝いに開かれる晩餐会を軸に、祖母・徳子の人生が丁寧に紐解かれていきます。戦時下での結婚、夫の死、その後の選択——歴史の波に翻弄されながらも、なぜ今この時に光輝く晩餐会を開くのか。その答えを探る過程で、一人の女性がどのように人生を歩み、どのような思いで家族を見守ってきたのかが見えてくる。 特に印象的なのは、祖母が「よき時」をどう捉えているかという視点です。失われた過去ではなく、今この瞬間、そして未来への希望——その転換が、家族との関係性をも変えていく。授業で人生観について話す機会が多い身として、この物語の中にある「いのちの肯定」みたいなメッセージが胸に響きました。 美しい食卓描写も相まって、読み終わった後に家族との時間を大切にしたくなる。そういった温かさを持った感動作です。
最近、宮本輝の作品がまた注目を集めているという話を聞いて、この本を手に取ってみた。九十歳を迎えた祖母が企画する晩餐会という舞台設定だけで、既にグッと引き込まれてしまった。 読み進めると、その晩餐会の背景にある祖母の人生が徐々に明かされていく。戦中戦後という激動の時代を生き抜いた一人の女性の姿が、孫の視点を通じて浮き彫りになっていく構成が見事だ。苦難と情熱、そして家族への想い——それらが積み重なって、今この瞬間が作られているんだという実感が、読んでいて胸に迫ってくる。 41歳の今だからこそ、親世代の深い背景や歴史の重みに共感できるのだろう。仕事で忙しい日々の中で、こういった「命の奇跡」について考えさせてくれる物語は貴重だ。話題作だけあって、その評判に違わぬ感動的な長編。年齢を重ねていくことの意味が、改めて問い直される一冊だ。
話題になっているのを見かけて手に取った『よき時を思う』。宮本輝さんの作品ということで期待していましたが、期待以上の素晴らしさです。 九十歳を迎える祖母が開く晩餐会を中心に、その人生の秘密が少しずつ明かされていく構成が秀逸。戦中戦後を生きた世代の女性の、壮絶でありながらも前向きな人生が、孫の視点を通して丁寧に描かれています。 特に心を掴まれたのは、祖母が「よき時」を過去ではなく未来に見ていたというテーマです。苦難と向き合いながらも、愛する者たちと食卓を共にする時間を夢見ていた姿勢に、本当に大事なものって何かを改めて考えさせられました。 仕事で忙しい日常の中で、つい人間関係を後回しにしてしまう自分に対する警告のようにも感じます。家族、食事、時間をかけて人と繋がることの大切さ。このメッセージがしみじみ響きます。 世代を超えて読む価値のある、深い感動長編です。