てつの本棚
感想

日本推理作家協会賞受賞作ということで期待を込めて手にしたのですが、正直なところ、六編を通して読んでもやや物足りなさが残ってしまいました。 島という限定的な舞台設定と、そこから離れられない人間関係という題材は確かに興味深いです。各短編も丁寧に構成されていて、推理小説としての仕掛けもあるのでしょう。ただ、教室で生徒たちの心情を読み取るのに慣れた身としては、登場人物たちの心の揺らぎや葛藤の描き方が、やや表面的に感じてしまうんです。 「望郷」というテーマは、その重さと複雑さが興味深いものの、各編で繰り返されるパターンに少し疲れが出てきてしまいました。選考委員が高く評価した「海の星」も、確かに仕掛けの巧さはありますが、それが物語全体の深さに結びついているかというと、疑問が残ります。 風情のある短編集としては読みやすいのですが、受賞作としての説得力という点では、個人的には合いませんでした。もう少し心理描写の奥行きを期待していただけに、残念です。

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