てつの本棚
感想

本屋大賞ノミネートという触れ込みで手に取ったのですが、期待以上でした。直木賞受賞作『月の満ち欠け』の著者ということで、すでに傑作の予感はありましたが、この『熟柿』はそれを大きく上回る完成度です。 主人公かおりの人生に寄り添いながら読んでいると、気づけば徹夜してしまいます。罪と向き合い、親子の絆に揺れ動く彼女の葛藤は、教育現場で多くの家庭の事情に触れてきた身として、どこか痛切に感じられました。一般的な「悪人」の物語ではなく、人間らしさの複雑さを丁寧に描き出しているんです。 ただ淡々と西へ西へと流れるだけではなく、物語の後半で明かされるある秘密が、これまでの読みを大きく揺さぶります。再度ページを遡りたくなるほどの構成の巧さ。ビジネス書なども読む身としては、こうした人間描写の深さ、構成の妙には改めて小説の良さを思い出させてくれます。気軽に読める作品ではありませんが、読み応えは本当に素晴らしい。本屋大賞の選考が楽しみです。

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