和子の本棚
感想

話題になっていた「海のシンバル」をついに読み終わりました。ウェブで大人気だったというこの作品、実は手に取るまで躊躇していたんです。ラブホテルと売春という題材に、どこか重苦しさを感じていたのかもしれません。 ですが読み始めると、一気に引き込まれてしまいました。二人が気送管で交わす短い手紙のやり取りが、こんなにも切実で愛おしいものになるとは。物理的には最も近い場所にいながら、決して触れることのできない距離感が、かえって二人の心の結びつきを浮き彫りにしているように感じられます。 55年生きてきて、恋愛小説は数多く読んできたつもりですが、こうした不可能な状況の中で花開く感情の描き方には、新しい視点がありました。社会的には周囲から判断されるような二人だからこそ、より純粋に相手を想う心が描かれているのかもしれません。 ウェブ連載から書籍化という経路も興味深く、これからもこういった作品が出てくるんだろうなと感じます。大切に手元に置いておきたい一冊です。