ラッシュライフ
新潮社 | 2005/05/01
みんなの感想
画廊経営者の戸田と画家の志奈子、空き巣専門の泥棒、黒澤 新興宗教の河原崎、カウンセラーの京子は不倫相手の妻を 殺そうと計画、40社続けて不採用の豊田と老犬。 一見バラバラな人生を送っている登場人物たちがどこかで 交錯し繋がっていき一つの物語として完成していく心地よさ。 お話としては結構ジメジメ感があるのに読後感は爽やか。 作中に何度か出てくる喋る案山子、あー、優午の事だろうなぁと 嬉しくなったり、銀行強盗事件の話、きっとそれはあの彼らなのだろうと 思ってみたりと、なんとなく他の伊坂作品とのリンクもあり楽しむことが出来た。
読むまで随分悩みました。複数の登場人物が絡み合う物語は、読み進めるのが難しいのではないかと心配だったからです。でも、実際に読んでみると、その不安は全くの杞憂でした。 著者の手腕の見事さに圧倒されます。一見すると脈絡のない四つの物語が、ページをめくるたびに少しずつ糸が結ばれていく感覚。泥棒、青年、カウンセラー、失業者という異なる背景を持つ人物たちの人生が、どのように交差するのかを想像しながら読む楽しみがあります。 何より驚いたのは、その先の読めなさです。慎重に物語を追っているつもりなのに、予想外の展開が何度も訪れる。それでいて無理矢理感がなく、すべてがすっと納得できるんです。会話のテンポも良く、ユーモアも交えながら、人間の本質的な部分が丁寧に描かれています。 終盤の仕掛けは特に秀逸。この本が何を言いたかったのかが、最後に一気に腑に落ちる快感を味わえます。複雑そうに見えて、実は人間らしさについての深い思考が貫かれているんだと感じました。文庫本という手軽さも手伝って、何度でも読み返したくなる一冊です。
話題になっていたので手に取った『ラッシュライフ』。正直なところ、最初は複雑な構成に戸惑いました。泥棒、自殺した父を持つ青年、不倫相手との再婚を考える女性カウンセラー、野良犬を拾う失職した男——一見バラバラな四つの物語が、どう繋がるのか見当もつきませんでしたから。 しかし読み進めるうちに、その複雑さこそが著者の狙いなのだと気付かされました。個人の執着や葛藤、人生の歪みが微妙に交差していく様は、まさに現代社会の混沌そのもの。機知に富んだ会話や予測不可能な展開に、つい先を急いで読んでしまいます。 特に印象に残ったのは、登場人物たちが皆どこか現実離れしていながらも、妙に人間らしい執着を持っていることです。会社員生活の長い私には、そうした「ズレ」がどこか身近に感じられて、くすりと笑わされたり、ドキリとさせられたりしました。 寓話のような、騙し絵のような——その言葉通りの一冊です。重厚さと軽妙さが同居した読み心地は、なかなか味わえるものではありません。
『ラッシュライフ』、面白かった。最初は四つの独立した物語が並行して進むのかと思ったけど、読み進めるうちにそれらが絶妙に絡み合っていく快感。教科書では味わえない、こういった仕掛けの妙を感じるのが読書の醍醐味だ。 登場人物たちが一見バラバラの人生を歩んでいるようで、実は深くつながっていく構造がいい。泥棒、自殺に悩む青年、不倫するカウンセラー、家族に捨てられた男――どれもどこか切実だけど、それが機知に富んだ会話と予想外の展開で次々と翻弄される。読んでいて、次は何が起こるんだろうという興奮が常に続く。 著者の筒井康隆らしい、ユーモアと哲学的な深さが両立した不思議な世界観。日常の枠を外した話なのに、妙にリアリティがある。40代になると、人生の複雑さや矛盾をより感じるようになるけれど、そういう時だからこそ、この作品の不条理さが心に届くんだと思う。気軽に読める文庫版で、こんなに知的興奮を得られるのは稀だ。