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感想

読むまで随分悩みました。複数の登場人物が絡み合う物語は、読み進めるのが難しいのではないかと心配だったからです。でも、実際に読んでみると、その不安は全くの杞憂でした。 著者の手腕の見事さに圧倒されます。一見すると脈絡のない四つの物語が、ページをめくるたびに少しずつ糸が結ばれていく感覚。泥棒、青年、カウンセラー、失業者という異なる背景を持つ人物たちの人生が、どのように交差するのかを想像しながら読む楽しみがあります。 何より驚いたのは、その先の読めなさです。慎重に物語を追っているつもりなのに、予想外の展開が何度も訪れる。それでいて無理矢理感がなく、すべてがすっと納得できるんです。会話のテンポも良く、ユーモアも交えながら、人間の本質的な部分が丁寧に描かれています。 終盤の仕掛けは特に秀逸。この本が何を言いたかったのかが、最後に一気に腑に落ちる快感を味わえます。複雑そうに見えて、実は人間らしさについての深い思考が貫かれているんだと感じました。文庫本という手軽さも手伝って、何度でも読み返したくなる一冊です。

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