定年を迎えた夫婦の関係性が、ある青年の出現によってぐらぐらと揺らいでいく——こんなシンプルながら深刻なテーマを、こんなにも読みやすく、それでいて心に響く話に仕上げるって本当に見事だなと思いました。 エンジニアとして仕事一筋で生きてきた身だからか、定年後のアイデンティティーの喪失感や夫婦間の微妙な空気感がすごくリアルに感じられたんです。普通なら重くなりそうなテーマなのに、ページをめくる手が止まりません。登場人物たちの行動一つひとつに「あ、この人たちもこういう判断をしてしまうよね」って共感できるところが多くて。 何より素敵だったのは、物語が「正解」を押し付けないところ。人間関係の複雑さや、人生の予期せぬ転機の中で、みんなが少しずつ戸惑いながら歩んでいく様子が、とても人間らしくて温かい。 気軽に読める文庫本のサイズ感も良くて、通勤電車での読書に最適でした。確実に手元に置いておきたい一冊です。
最近登録された他の本の感想
2026年06月07日
戦闘機パイロットとテレビディレクターという、一見すると絶対に交わらないような二人が出会うところから始まるこの物語。タイトルだけで引き込まれて手に取ってみました。 読み始めると、エンジニアの仕事で日々ロジカルに物事を考えている脳が、ちょうどいい感じでほどけていくような感覚。パイロットのストイックさとディレクターの創造的な視点が衝突し、次第に引き合われていく過程が本当に丁寧に描かれています。二人の会話がテンポよく、くすくす笑ってしまう場面も多かった。 個人的には、職業の描写がリアルだなと感じました。自分も仕事の現場を知る人間なので、著者がこれらの世界をちゃんと調べて書いてるんだろうなというのが伝わってくる。それが物語全体の説得力になってますね。 恋愛小説としても、エンタテイメント作品としても、バランスよくまとまっていて、気軽に楽しめるけど読み応えもある。週末に一気読みする快感、って久しぶりに味わった気がします。
2026年06月06日
前作『スピノザの診察室』が面白かったので、続編が出たと知って即座に手に取りました。 医師である主人公が患者と向き合う中で、医学では解決できない人間の本質的な問題に直面していく。その葛藤の描き方が本当に上手いなと感じます。哲学的な問い掛けが随所に散りばめられているのに、決して難しくなく、むしろ読んでいて考えさせられる。仕事で疲れた脳にちょうど良い刺激になります。 エンジニアの仕事をしていても、解決できない問題ってありますよね。この本を読んでいると、そういう時にどう向き合うかのヒントが得られた気がします。「医療では人は救えない」というタイトルの言葉も、深く考えると何度も頭に浮かんできました。 シリーズ作品のようですが、本作だけでも十分楽しめます。エッセイのような味わいもあり、物語としても引き込まれる。気軽に読める小説を探している人にもおすすめできる一冊です。映画化も決定しているそうなので、どう表現されるのか見てみたい。
2026年06月01日
前作がそんなに好評だったから、続編も期待して読んでみたんですよね。あの独特の温かさ、古書店という空間で描かれる人間関係の繊細さ——それは相変わらず健在です。ただ…正直なところ、物語としての新鮮さが少し薄れたかなという印象は拭えません。 登場人物たちの日常は相変わらず丁寧に描かれていて、ページをめくる心地よさはあります。でも話の展開が予測の範囲内に収まってしまう場面が多くて、「ああ、こうくるのか」という感じで読み進めてしまいました。恋愛のくだりも含めて、もう少し意外性があってもよかったのかな。 仕事で疲れた日の気軽な読書にはぴったりな一冊ではあります。巻末の掌編も素敵でした。ただ、続編として読むには、前作からの物語的な進展や深掘りがもっとあってもいいんじゃないかなと感じてしまいました。世界的ベストセラーの続編って難しいんでしょうね。
2026年06月01日
直木賞受賞作という触れ込みに惹かれて手に取った一冊。大人の恋愛の複雑さをこんなにも丁寧に、そして切実に描いた作品集は、なかなか出会えません。 特に印象的だったのは、同じ関係を二人の視点から描いた作品たち。エンジニアの仕事で論理的な思考に慣れている私だからこそ、感情の矛盾や葛藤の描き方にハッとさせられました。相手のことを好きなのに、同時に傷つけたくないからこそ距離を保つ—その痛切な心理が、これほど透明に伝わってくるのって珍しいです。 登場人物たちは誰も悪くない。誰もが精一杯生きていて、その結果がすれ違う。その儚さというか、やるせなさというか。読み終わった後も、登場人物たちの気持ちがずっと胸に残ります。 気軽に読めるエッセイもいいけど、たまには心がギュッと掴まれるような小説も必要だなって感じさせてくれた一冊。寝る前に読むのは危険なくらい、考えさせられます。おすすめです。
2026年06月01日
SNSで見かけた「フェイクニュース時代に必要な思考法」という言葉に惹かれて手に取りました。日々の仕事でも情報の取捨選択が重要だので、何か実用的なヒントがもらえるかなという期待でした。 本書は古代ギリシアから現代までの懐疑論の発展を辿りながら、「判断を保留する」という思考法の重要性を説きます。デカルトやヒュームといった思想家たちの議論が分かりやすく整理されているので、哲学の基礎知識がない私でも読み進められました。 ただ、正直なところ「なるほど」と頷きつつも、心に残るような深い洞察には欠けた印象です。懐疑的に物事を考えることの大切さは理解できますが、では実際に日常でどう応用すればいいのか、という部分がやや曖昧に感じられました。入門書としては及第点ですが、もっと具体的な事例や実践的なアドバイスがあれば、さらに良かったかもしれません。 気軽に読める新書として悪くはないですが、特に心を掴まれる一冊ではなかったというのが正直な感想です。
2026年06月01日
子どもの頃に読んだ記憶がおぼろげにあったから、改めて手に取ってみました。カエルとヒキガエルの友情の物語、という触れ込みはシンプルだけど、大人が読み返すと違う視点が見えるかな、と期待していたんです。 読んでみて思ったのは、やはりこれは児童文学なんだということ。友人を思いやる気持ち、困ったときに助け合う大切さ——そういった基本的で純粋なメッセージが丁寧に綴られています。悪くない、むしろ良い物語です。ただ、大人が読む分には、その素朴さがちょっと物足りなくも感じてしまいました。 エンジニア的に言うなら、シンプルでバグのないコード、みたいな感じでしょうか。機能的で正確だけど、特に驚きや感動があるわけじゃない。子どもに読み聞かせたり、プレゼントしたりするには最適だと思います。でも自分自身の読書の時間として選ぶなら、もう少し複雑な感情や奥行きのある作品に惹かれるかな。児童文学の枠組みの中では完成度高いんですけどね。
2026年05月06日
最近、仕事のストレス解消にピアノを弾き始めました。技術書ばかり読んでいた頭をリセットするのに、音楽って本当にいいんですね。そんなタイミングで見つけたのがこの楽譜集。 何が良かったかというと、アレンジが本当に"やさしい"ところです。ピアノ初心者の私でも、1コーラス程度なら手軽に弾ける難易度になっていて、達成感を感じながら練習できます。Mrs. GREEN APPLEやtuki.など、今どきのアーティストの曲が揃っているのも◎。アニメや映画の主題歌も入っているから、「あ、この曲!」という嬉しい出会いもありました。 ただ、ワンコーラスのみというのは物足りなく感じることもあります。全部通して弾きたい曲もあるので、そこはちょっと残念。でも、忙しい日常の中で、短くても好きな曲を手軽に弾けるという点では、むしろこれで正解かもしれません。エンジニア的に言うと、ターゲットユーザーのニーズを上手く掴んだ設計だと思います。気軽にピアノを楽しみたい人には、本当におすすめできる一冊です。
2026年05月06日
シリーズも7巻目に突入したこのシリーズ、ついに手にしました。毎回「今度こそどんな展開になるんだろう」とワクワクしながら読み始めるのが習慣になっています。 今巻は外交戦がメインになるということで、政治的な駆け引きとか歴史知識の使い方がどう描かれるのか気になっていたんですが、期待通り面白い。主人公のキャラクターはもちろんのこと、周囲の人物たちとの関係性の変化も丁寧に追えて、ついつい続きが気になって徹夜してしまいました。 エンジニアの仕事をしていると、複雑なシステムを一から構築していく爽快感ってあるんですけど、この作品もそれに近い。不幸な歴史を知識と行動で変えていく過程が、単純だけど本当に気持ちいい。書き下ろし番外編も含まれているということで、新しい視点からの話も楽しめました。 カジュアルに楽しめる娯楽小説として、完成度が高いと思います。仕事の合間の息抜きにぴったり。シリーズ累計10万部突破というのも納得です。
2026年05月06日
駅前の便利屋という地味な舞台なのに、こんなに楽しいって。多田と行天のコンビが本当に魅力的で、一気読みしてしまいました。 ペットの預かりとか引越しの手伝いとか、日常の小さな依頼を丁寧に描いているはずなのに、ページをめくる手が止まりません。二人の掛け合いの妙というか、何気ないセリフの中に隠れたユーモアを拾うのが快感。エンジニア的には「こういう問題解決のアプローチ、あるある」と共感することもあって、変な距離感なく読めるんです。 直木賞受賞作というので身構えてたんですが、全然堅くなくて。むしろ軽いタッチで、でもちゃんと深いところもある。通勤電車で読む本としても完璧でした。文庫だから手軽さも最高。続編があるなら迷わず読むつもりです。何度でも戻ってきたくなる世界観。
2026年05月06日
SNSで見かけた小寺智子さんの言葉に惹かれて手に取った一冊。多くのベストセラーを手がけてきた編集者が、自分の人生観や仕事観をどう綴るのか、そこが気になっていました。 読んでみると、とても自然な語り口で心に入ってくるんです。編集者としてのキャリアの中で学んだことを、押し付けがましくなく、むしろ一人の人間としての思考の過程を教えてくれている感じ。エンジニアの仕事をしていると、数字や効率ばかり追い求めてしまう傾向があるんですけど、このエッセイを読むと「そういう見方もあるな」と視点が広がる瞬間が何度もありました。 特に仕事とプライベートのバランスについて書かれた部分は、同じ女性として、同じ職場で働く人間として参考になりました。ただしエッセイ全体としては、少しスピリチュアル寄りな部分も感じたので、そこまで深い洞察を求めている人だと物足りないかもしれません。でも気軽に読むエッセイとしては、本当に良い一冊。休日にコーヒーを飲みながらゆっくり読み進めるのにぴったりです。
タイトル
読書状況
評価
感想
ネタバレを表示しますか?
この感想には物語の内容に関するネタバレが含まれている可能性があります。