あなたの愛人の名前は

あなたの愛人の名前は

島本 理生

出版社:集英社 出版年月日:2021/12/17

集英社 | 2021/12/17

3.00
本棚登録:3人

みんなの感想

感想

直木賞受賞作ということで、期待を持って手に取りました。大人の恋愛を描いた短編集とのことでしたが、正直なところ、私の心には響きませんでした。 確かに、異なる視点から同じ場面を描く手法は興味深いのですが、登場人物たちの心情があまりに自分勝手に感じられてしまいました。婚約者がいながら浮気に溺れる、既婚者と関係を持つ…こうした設定自体は文学的に描くことは可能ですが、本書ではどうしても共感しきれない。 何十年もの人生経験を積んできた私からすると、大人だからこそ守るべき信義や責任というものがあると考えます。そうした視点から見ると、この作品集は「不倫の甘美さ」に浸ることが主眼になっているようにも感じられました。 表現技法や構成の工夫は認めますが、人生の重みや他者への思いやりを考える読書をしたい身としては、やはり物足りなさが残りました。直木賞受賞作だからこそ、より深い人間的な問題提起を期待していたのです。

感想

直木賞受賞作という触れ込みに惹かれて手に取った一冊。大人の恋愛の複雑さをこんなにも丁寧に、そして切実に描いた作品集は、なかなか出会えません。 特に印象的だったのは、同じ関係を二人の視点から描いた作品たち。エンジニアの仕事で論理的な思考に慣れている私だからこそ、感情の矛盾や葛藤の描き方にハッとさせられました。相手のことを好きなのに、同時に傷つけたくないからこそ距離を保つ—その痛切な心理が、これほど透明に伝わってくるのって珍しいです。 登場人物たちは誰も悪くない。誰もが精一杯生きていて、その結果がすれ違う。その儚さというか、やるせなさというか。読み終わった後も、登場人物たちの気持ちがずっと胸に残ります。 気軽に読めるエッセイもいいけど、たまには心がギュッと掴まれるような小説も必要だなって感じさせてくれた一冊。寝る前に読むのは危険なくらい、考えさせられます。おすすめです。

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