みつこの本棚
あなたの愛人の名前は

あなたの愛人の名前は

島本 理生 集英社 2021年12月17日

感想

直木賞受賞作ということで、期待を持って手に取りました。大人の恋愛を描いた短編集とのことでしたが、正直なところ、私の心には響きませんでした。 確かに、異なる視点から同じ場面を描く手法は興味深いのですが、登場人物たちの心情があまりに自分勝手に感じられてしまいました。婚約者がいながら浮気に溺れる、既婚者と関係を持つ…こうした設定自体は文学的に描くことは可能ですが、本書ではどうしても共感しきれない。 何十年もの人生経験を積んできた私からすると、大人だからこそ守るべき信義や責任というものがあると考えます。そうした視点から見ると、この作品集は「不倫の甘美さ」に浸ることが主眼になっているようにも感じられました。 表現技法や構成の工夫は認めますが、人生の重みや他者への思いやりを考える読書をしたい身としては、やはり物足りなさが残りました。直木賞受賞作だからこそ、より深い人間的な問題提起を期待していたのです。