直木賞受賞作という触れ込みに惹かれて手に取った一冊。大人の恋愛の複雑さをこんなにも丁寧に、そして切実に描いた作品集は、なかなか出会えません。 特に印象的だったのは、同じ関係を二人の視点から描いた作品たち。エンジニアの仕事で論理的な思考に慣れている私だからこそ、感情の矛盾や葛藤の描き方にハッとさせられました。相手のことを好きなのに、同時に傷つけたくないからこそ距離を保つ—その痛切な心理が、これほど透明に伝わってくるのって珍しいです。 登場人物たちは誰も悪くない。誰もが精一杯生きていて、その結果がすれ違う。その儚さというか、やるせなさというか。読み終わった後も、登場人物たちの気持ちがずっと胸に残ります。 気軽に読めるエッセイもいいけど、たまには心がギュッと掴まれるような小説も必要だなって感じさせてくれた一冊。寝る前に読むのは危険なくらい、考えさせられます。おすすめです。
最近登録された他の本の感想
2026年08月07日
話題になっていたので気軽に手に取ったんですが、一気読みしてしまいました。エンジニアの仕事をしていると、どうしても論理的思考に偏りがちなんですけど、この作品はそういう日常を忘れさせてくれるくらいの没入感がありますね。 秘密の日記という設定だけで既に心を掴まれるんですが、主人公たちの関係性の描き方が本当に秀逸。二人の視点から同じ出来事が違う風に見えるという構成も面白くて、読み進めるたびに「あ、そっか」という小さな驚きが積み重なります。 何より印象的だったのは、限られた時間の中で二人が関係を深めていく過程。派手な展開があるわけじゃないのに、ページをめくる手が止まりません。後半、伏線が回収される場面では思わず涙ぐんでしまいました。デビュー作とは思えないくらい完成度が高い。 日常の忙しさに追われている時こそ、こういう作品に出会えるのって幸運だなって感じます。多くの人に愛される理由がよく分かりました。
2026年07月27日
話題になっていたので手に取ってみたんですが、正直なところちょっと物足りなかったというのが素直な感想です。 重いテーマを扱った作品ということは理解しているんですけど、主人公の心理描写がもう少し丁寧だったらなあと感じました。エンジニアの仕事をしていると、複雑なロジックや人間の動機を追っていく癖がついてるせいか、秀一の決断に至るまでのプロセスが駆け足に感じてしまったんです。 もちろん、限られた紙面でそこまで細かく書くのは難しいんだろうなというのは分かります。でも、こういった極限の状況に追い込まれた若者の心理こそが、この作品の核になるべきじゃないかと思うんですよ。その部分がもう少し掘り下げられていたら、もっと引き込まれたんじゃないでしょうか。 文章そのものは読みやすいし、湘南という舞台設定も良いんです。だからこそ、あと一歩踏み込む勇気があれば、かなり良い作品になれたんじゃないかなという、もどかしさが残ってしまいました。
2026年07月25日
川崎鷹也のエッセイ、予想以上に引き込まれました。正直なところ、アーティストの自伝本って少し敷居が高いイメージがあったんですが、この本は違いました。 本人が書き下ろしたというだけあって、とても素直な語り口が心地よい。なぜあんなに人の心を揺さぶる歌声が出るのか、その秘密が垣間見える感じがします。挫折や努力の話は、エンジニアの私にとってもすごく共感できる部分が多かったです。地道に技術を磨くって、ジャンルは違えど本質的には同じなんだなって改めて思わされました。 音楽の技法についても、難しすぎず、でも本質的な部分は丁寧に説明されているから、音楽知識がなくても楽しめます。短編みたいなのも挟まってあるので、さくさく読み進められました。 一気読みして、その後彼の曲を聴き直したくなるような、そういう素敵な一冊。もっと早く読めばよかったなって思います。
2026年07月23日
シリーズを追いかけ続けてようやく14巻にたどり着きました。いや、相変わらず面白い。これ、本当に何度読んでも飽きません。 今巻は主人公・莉奈が新しい国に到着して、またもや食べ物で周囲を魅了していく話なんですけど、焼肉パーティーから始まる外交戦は思わず笑ってしまいました。竜に乗ってきた女の子が城門前で焼き肉を焼く、この非常識さがもう最高。当然、王様も陥落するわけで。 エンジニアとしての仕事柄、論理的に構成された物語を読むことが多いんですが、このシリーズって実は緻密に計算されているんですよ。一見ほのぼのしているように見えて、各キャラクターの思惑がちゃんと絡み合ってるし、世界観の設定も無理がない。その上で、食べ物の描写から伝わる温かさと親近感が素晴らしい。 ストレスフルな日常から逃避したいときに最適です。ご飯を食べながら読むと、さらに沼にハマります。次巻が待ち遠しい。
2026年07月16日
本屋大賞受賞作だからという理由で手に取ったこの作品、予想を大きく上回る面白さでした。 「愛ではない。けれどそばにいたい。」という帯のフレーズに惹かれて読み始めたんですが、この一文だけで物語の本質がつかめているような気がします。世間的には批判されるであろう二人の関係性を、決して美化することなく、かといって単純に非難することもなく描き出す筆力に引き込まれました。 プログラミングの論理的思考に慣れた頭でも、人間関係の複雑さや感情の機微はコードでは解けない問題だなと改めて感じさせられます。各登場人物の視点が交錯する構成も工夫されていて、同じ事象を違う角度から見ることで、物語に奥行きが生まれていく。仕事の合間に少しずつ読み進めるのに丁度いいペースで読めました。 映画化も決定しているようですが、この小説だからこそ成立する世界観を、スクリーンでどう表現するのか非常に気になります。小説として完成度高く、何度も読み返したくなる一冊です。
2026年07月09日
仕事でコードと向き合う毎日だからこそ、こういう優しい世界観にすっと入り込めるんだと思う。ホテルうらうらという架空の場所が、読んでいて本当に存在する場所みたいに感じられて、ここに泊まりに行きたいなって何度も思った。 編集者、会社員、母親——違う立場の三人が、それぞれの人生の悩みを抱えてこのホテルにやってくる。その描き方がすごく丁寧で、押し付けがましくない。占いができるオーナーが答えを教えてくれるわけじゃなくて、海を眺めたり、素の自分になったりする中で、ゆっくりと心が変わっていく感じなんだよね。 潮が満ちたり引いたりするみたいに、人生にも流れがあって、時には待つしかない時間があるんだっていうメッセージがさりげなく伝わってくる。エンジニア的には、こういう「自然な流れに身を任せる」という発想は日頃とは正反対だから、余計に響いたのかもしれない。疲れた心をリセットしたいときに読むのに最適な一冊です。
2026年06月20日
成瀬シリーズの続編ということで期待して読みました。正直、前作を読んでからしばらく経っていたので、成瀬あかりというキャラクターをちゃんと覚えているか不安だったんですが、すぐに彼女の世界に引き込まれました。 この作品の面白さは、成瀬という軸がありながらも、毎話異なる登場人物たちの視点を通じて物語が広がっていくところですね。エンジニアとして論理的に考える癖がある私も、こういう多角的なストーリー展開には心がときめきます。小学生ファンの話、父親の葛藤、女子大生のキャリアの悩み...どれもが成瀬との交差で新しい色が出ていて、短編の集合というより一つの大きな物語として成立しているのが素晴らしい。 ただ一つ、終盤の展開にはちょっと驚きました。成瀬の行動の真意が最後まで完全には明かされない部分があって、それが謎のままというのは...賛否分かれるかもしれません。私個人としては、その曖昧さも含めて成瀬らしいなと感じたので、気に入っています。気軽に読める長さながら、読み応えのある良い本でした。
2026年06月15日
シリーズものの途中巻ということもあって、既に世界観に入り込んでいる読者向けという感じが強い作品でした。第三部の6巻目ということで、キャラクターたちの成長や関係性は十分に構築されているんでしょう。 水属性の魔法使いの「気ままな冒険」というコンセプトは悪くないんですが、今巻では特に新しい魅力を感じられなかったというのが正直なところ。東方諸国編という舞台設定は面白そうなのに、展開としては予想の範囲内で、読んでいて「ああ、次はこうなるんだろうな」と想像できてしまう部分が多かったです。 魔法戦闘シーンは派手で迫力があるんでしょうけど、仕事の合間に気軽に読むには少し密度が濃すぎるような。アニメ化されているということで、そちらを観た方が映像の迫力で楽しめるかもしれません。 シリーズを追い続けている人にとってはストーリーの進展として必要な一冊なんだと思いますが、個人的には話の節目で一息つきたい気分。累計120万部という実績は納得できますが、私のようなカジュアルな読者には、もう少し立ち止まって考えさせてくれるような要素があれば良かったなと感じました。
2026年06月14日
警察内部の部署を舞台にした珍しい設定だったので、興味を持って手に取りました。落とし物から事件が解き明かされていくという奇想天外なプロット、実は結構好物なんですよね。 ただ正直なところ、可もなく不可もなく、という感じでした。超能力的な設定は面白いんですけど、それがストーリーにどう活きているのかが少し曖昧に感じられて。主人公の遠子さんが独自捜査を始める動機もいまいち腑に落ちませんでした。 それでも読んでいて退屈することはなく、各エピソードは程よいテンポで進みます。会計課という地味な部署が舞台というのも、実務的な視点があってリアリティがありました。エンジニアとして、細かい設定や整合性に目が行きがちなんですが、そこはまあ及第点かな。 軽くエンタメとして読むには十分で、週末にさっと読み終わるぐらいの気軽さが良かったです。ミステリーとしてはもう一押し欲しかったけど、著者初の警察ものということなので、次作に期待してみたいです。
2026年06月13日
下巻を一気読みしてしまいました。上巻で張られた伏線が次々と回収されていく快感、そして何より人間の複雑な感情の描き方が秀逸です。 倉持という男がこんなに厄介な存在になるとは。田島の気持ちがぐるぐると揺らぐ様子は、本当にもどかしくて。エンジニアの仕事で論理的に物事を考える日常とは違う、感情のモヤモヤした部分を見つめさせられるような作品ですね。 人間は誰もが心の中に「殺意」のようなものを持っているはず。それを自覚するか無視するか、向き合うか目を背けるか——その選択が人生を左右するんだなと感じました。「殺人の門」というタイトルは伊達じゃない。ページをめくる手が止まりません。 完結ということで、後味がスッキリというわけではないのが、この本の強さだと思います。もやもやしたまま物語は終わるけど、それが人生そのものなのかもしれないな、と。個人的には好きなタイプの小説です。
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