その話は今日はやめておきましょう

その話は今日はやめておきましょう

井上 荒野

出版社:毎日新聞出版 出版年月日:2021/04/30

毎日新聞出版 | 2021/04/30

4.00
本棚登録:3人

みんなの感想

感想

定年を迎えた夫婦の関係性が、ある青年の出現によってぐらぐらと揺らいでいく——こんなシンプルながら深刻なテーマを、こんなにも読みやすく、それでいて心に響く話に仕上げるって本当に見事だなと思いました。 エンジニアとして仕事一筋で生きてきた身だからか、定年後のアイデンティティーの喪失感や夫婦間の微妙な空気感がすごくリアルに感じられたんです。普通なら重くなりそうなテーマなのに、ページをめくる手が止まりません。登場人物たちの行動一つひとつに「あ、この人たちもこういう判断をしてしまうよね」って共感できるところが多くて。 何より素敵だったのは、物語が「正解」を押し付けないところ。人間関係の複雑さや、人生の予期せぬ転機の中で、みんなが少しずつ戸惑いながら歩んでいく様子が、とても人間らしくて温かい。 気軽に読める文庫本のサイズ感も良くて、通勤電車での読書に最適でした。確実に手元に置いておきたい一冊です。

感想

新社会人としてキャリアを歩み始めた自分だからこそ、この作品が胸に響きました。定年後の夫婦の日常に一人の青年が現れることで生じるズレや葛藤を、直木賞作家が繊細に描いています。 人生の転機を迎える登場人物たちの心理描写が特に秀逸です。長年一緒にいた相手をどこまで理解できるのか、人生観の違いがどうしようもなく存在することの悲しさ——そうした普遍的なテーマが、丁寧に紡ぎ出されていきます。 読んでいて気づかされるのは、私たちが人間関係で日々選んでいる「言葉」の重みです。タイトルの「その話は今日はやめておきましょう」という一言に象徴される、言わないことの意味。新社会人として職場や家族との関係を築く中で、この視点は本当に大事だと感じます。 文庫化を機に多くの人に読まれるべき一冊。人生経験が増すたびに、きっと違う読み方ができるような奥深さがあります。ぜひ手に取ってみてください。

感想

定年後の生活について考えさせられる作品だと思いました。夫婦関係が揺らぐという設定は、同年代の私たちにとって他人事ではなく、ドキドキしながら読み進めました。 直木賞作家さんの作品ということで期待して手に取ったのですが、正直なところ、やや物足りなさを感じます。青年の登場によって生じる波紋は分かるのですが、その後の展開が予想の範囲内におさまってしまった感じがするのです。 もっとも、人生経験の豊かさを思うと、作者がどのような意図でこのような結末にしたのか、もう一度じっくり読み返してみるのも良いかもしれません。文庫という手軽なフォーマットも嬉しい。 定年を迎えた方や、人生の転機について静かに考えたい方にはお勧めできる一冊ですが、劇的な展開を期待する方には少し物足りないかもしれません。慎重に選びたい方は、まずレビューをいくつかご確認になってから判断されるのが良いと思います。

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