裕子の本棚
その話は今日はやめておきましょう

その話は今日はやめておきましょう

井上 荒野 毎日新聞出版 2021年4月30日

定年後の生活について考えさせられる作品だと思いました。夫婦関係が揺らぐという設定は、同年代の私たちにとって他人事ではなく、ドキドキしながら読み進めました。 直木賞作家さんの作品ということで期待して手に取ったのですが、正直なところ、やや物足りなさを感じます。青年の登場によって生じる波紋は分かるのですが、その後の展開が予想の範囲内におさまってしまった感じがするのです。 もっとも、人生経験の豊かさを思うと、作者がどのような意図でこのような結末にしたのか、もう一度じっくり読み返してみるのも良いかもしれません。文庫という手軽なフォーマットも嬉しい。 定年を迎えた方や、人生の転機について静かに考えたい方にはお勧めできる一冊ですが、劇的な展開を期待する方には少し物足りないかもしれません。慎重に選びたい方は、まずレビューをいくつかご確認になってから判断されるのが良いと思います。