直人の本棚
感想

日本ハードボイルド小説の傑作として名高い作品だと聞いていたので、この機会に読んでみました。私立探偵・工藤俊作という、確かに伝説的なキャラクターの活躍が描かれています。 最初の依頼は一見シンプル──失踪した少女の捜索。しかし物語が進むにつれ、都市の暗部に潜む複雑な人間関係と事件が浮き彫りになっていく構成が見事です。脅迫電話という転機によって、単なる捜索事件から別の様相へと変わっていく緊張感は、さすが同名ドラマの原案者だけあって巧みです。 ハードボイルド小説として求められる、渇いた文体と倦怠感のある空気感もしっかり保たれています。事件の真犯人がどこにいるのか、少女の真の行方は何なのか──その「苦い真実」へ辿り着く過程で、読者も工藤俊作と共に都会の迷路を歩むことになります。 世代として私も昭和のハードボイルド文化を身近に感じてきた世代ですが、今読んでもその手法は古びていません。日本探偵小説史において一度は読むべき傑作だと改めて実感した一冊です。

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