直人の本棚
新装版 殺戮にいたる病

新装版 殺戮にいたる病

我孫子 武丸 講談社 2017年10月13日

感想

話題のミステリということで手に取ってみた一冊だが、これは確かに評判通りの傑作だ。叙述トリックというと、どうしても「どう騙されるか」という浅薄な楽しみに陥りやすいのだが、本作はそれを遥かに超えている。 サイコキラーの内面を描きながら、読者の認識を巧妙に操る。その手法の鮮やかさもさることながら、ただ騙すだけでなく、人間の心理の深淵を照らし出すという文学的な重みがある。読み終わった後に、あの描写はこういう意味だったのか、と気づく瞬間の快感は格別だ。 文体も緊張感があり、引き込まれるように読み進める。再読の価値も高く、最初の読みと二度目では全く異なる体験ができるはずだ。これぞ「二度読みミステリ」の名称が相応しい。 企画もの的な面白さだけでない、本格的な文学作品として確かに秀逸。ここまでの完成度なら、長く愛読される理由も納得できる。同年代の男性読者なら、ぜひ一度は挑戦する価値のある傑作である。