直人の本棚
北條民雄 小説随筆書簡集

北條民雄 小説随筆書簡集

北條 民雄 講談社 2015年10月10日

感想

最近、新聞の文化面で話題になっていた北條民雄についてようやく向き合うことができた。19歳でハンセン病と診断され、療養所での隔離生活という絶望的な状況下で、わずか数年間で次々と傑作を生み出した天才作家。その軌跡を辿る本書を読んで、正直なところ圧倒された。 収録されている小説はどれも深い。死と隣り合わせの日々のなかで、北條が何を見つめ、何を書き残そうとしたのか。川端康成や中村光夫との書簡も興味深く、同時代の知識人たちが如何に彼を認め、期待していたかが伝わってくる。極限状況での創作という誘惑的なテーマに堕することなく、作品そのものの質の高さが貫かれている点が素晴らしい。 昨今、多くの話題本が流行り廃りする時代にあって、こうした古典的な価値を問い直す企画は本当に大切だと感じた。人生経験を重ねた今だからこそ、逃げ場のない状況での人間の営みに胸を打たれるのだろう。読むべき一冊である。