直人の本棚
屍人荘の殺人

屍人荘の殺人

今村 昌弘 東京創元社 2019年9月11日

感想

話題になっていたデビュー作ということで、文庫化を機に手に取ってみた。確かに著者の構成力は見事で、ページをめくる手が止まらない。クローズド・サークルという古典的な設定にゾンビという現代的な要素を組み合わせるアイデアは新鮮だし、複数の探偵が登場する構図も工夫されている。 ただ、読み終わって冷静に振り返ると、やや仕掛けに頼りすぎている印象は拭えない。謎解きの部分で「なるほど」と納得させられるのだが、キャラクターの動機や心理描写の掘り下げに物足りなさを感じた。もう少し登場人物との関係構築に紙数を使ってくれたら、単なるエンタメ性を超える作品になっていたのではないか。 映画化されるほどの人気作だけあって、エンターテインメント作品としての完成度は高い。ただ、50代の読書家としては、もう一段階の深さを求めてしまう。話題作チェックという目的は達成できたが、心が強く揺さぶられるような読後感ではなかったというのが正直なところである。

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