直人の本棚
悼む人(下)

悼む人(下)

天童荒太 文藝春秋 2011年5月10日

感想

話題の作品だったので、どうしても気になって上巻から一気読みしてしまった。下巻に入ると、物語の本質がようやく見えてくる。一人の死をめぐって、それぞれが何を背負い、何を手放すのか——その過程がこれほどまでに丁寧に描かれた小説は久しぶりだ。 静人という人物が投げかける問いが、周囲の人間たちを少しずつ変えていく。家族の確執や死別の痛み、そして自分自身の人生と向き合う葛藤。どれもが決して奇想天外ではなく、どこか自分の人生と重なる部分がある。その普遍性がこの作品の強さなのだと思う。 終盤に向けて、静かだが確かな感動が押し寄せてくる。死という重いテーマを扱いながらも、決して暗くはなく、むしろ人生を肯定する力強さが感じられた。58年生きてきた今だからこそ、この作品の深さが響くのかもしれない。話題作として読む価値は確かにある。同時に、人生の一定の段階にある読者にとって特に味わい深い一冊だと確信する。