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ひだまりのストリート・ピアノ

ひだまりのストリート・ピアノ

河邉 徹 PHP研究所 2026年2月19日

感想

ショッピングビルの広場に置かれたピアノという、シンプルながら心温まる設定に惹かれて手に取りました。正直なところ、こうした装置的な話は時々説教臭くなる傾向があるので慎重でしたが、この作品はそうした不安を見事に払拭してくれました。 登場人物たちの人生の断面をピアノを通じて描く構成が素晴らしい。仕事と育児の狭間で揺れる女性、SNSの時代を生きる若者、喪失感を抱える老人——立場も年代も異なる人々が、ピアノという接点で微かに繋がっていく。そのさりげなさが良いのです。説明的にならず、それぞれのエピソードが自然と重層的に見えてきます。 特に心に残ったのは、ピアノの撤去をめぐる後半の展開。そこで描かれるのは単なるノスタルジアではなく、変化の中で何が本当に大切かを問う視点。39歳の身として、仕事の中での自分の価値や人間関係を改めて考えさせられました。 穏やかなのに深い余韻が残る。会社員として忙しい日常の中でも、ほっと一息つきながら読み進められる良い作品だと思います。