penの本棚
感想

話題の作品だったので、慎重に評判を調べてから手に取りました。実際に読んでみると、その期待は十分報われました。 二つの大地震と未知の病原体という、私たちが現実に経験した出来事を背景に、別々の場所で暮らす三人の日常が静かに描かれていきます。最初は散漫に感じるかもしれませんが、読み進むうちにそれぞれの時間の流れが微妙に絡み合っていることに気づきます。著者が「蓄積した時間を見つめる」と書いているとおり、この作品は派手な展開よりも、地層のように積み重なった日々の中に何が存在しているのかを問い続けています。 仕事と日常に追われている身としては、三人の「続き」を追いながら、自分たちが生きているこの時代について考えずにはいられませんでした。決して明るい物語ではありませんが、丁寧で誠実な筆致に支えられた深い読後感があります。小説として完成度が高く、読む価値がある一冊だと思います。