penの本棚
感想

このところ、恋愛小説って少し敬遠していたんです。年齢とともに、定型的な恋愛描写には素直に入り込めなくなっていて。でも本書のレビューを何度も読み返して、「かたちに囚われない」というキーワードに惹かれて手に取ることにしました。 正解でした。各編を読み進めるたびに、自分がこれまでどれだけ狭い枠の中で「恋愛」を定義していたか気づかされました。三角関係も同性愛も片想いも、すべてが同じ重さで、同じ輝きをもって描かれている。そこに作者の真摯さが感じられます。 何より印象的だったのは、登場人物たちの揺らぎです。確実な答えを求めながらも、その道の途中で初めて「本当に大切なもの」に気づく。その瞬間の描写が本当に繊細で、読んでいて自分の人生も静かに照らされるような感覚がありました。 39歳だからこそ響く表現がたくさんあります。若い頃には見落としていたであろう、感情の機微が丁寧に言語化されている。装丁も上品で、通勤時間にもゆっくり読める文庫版のフォーマットが嬉しい。大人が読むべき一冊だと思います。