智子の本棚
大江健三郎全小説 第1巻

大江健三郎全小説 第1巻

大江 健三郎 講談社 2018年9月12日

感想

話題の文豪・大江健三郎の全小説第1巻ということで、文学的教養を深めたいと思って手に取りました。23歳で芥川賞を受賞した「飼育」をはじめ、デビュー前後の初期短編が一堂に集められた貴重な一冊です。 読み始めると、若き日の大江が実験的で前衛的な表現に挑んでいたことがわかります。作品によってはかなり読み解くのに時間がかかるものもあり、率直に言って難しい。現代に生きる私たちにとって、60年以上前の感覚や文体を追い続けるのは結構な労力です。 もちろん、その実験性や新しさが当時いかに衝撃的だったのか、という文学史的な価値は理解できます。ただ、現在の視点で読むと、個々の作品の面白さにばらつきがあるというのが正直なところ。収録作品数が多いぶん、引き込まれるものもあれば、そうでないものもあるんです。 自営業で時間が不規則な私にとっては、気軽に読み進められるタイプの本ではありませんでした。大江文学の源点を知る上で必読という位置づけなら理解できますが、単純な読み心地の良さを求める読者には向いていないと感じます。文学的な責任感で読み切った、という印象です。

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