智子の本棚
感想

話題の青春ミステリーだと聞いて手に取った一冊でした。正直なところ、ここまで一気読みさせられるとは思いませんでした。 主人公の秀一が置かれた状況の緊迫感が最初から最後まで途切れません。貧困家庭という現実的な背景設定が、単なる悲劇的な美談に陥るのではなく、彼の選択と葛藤をより深く掘り下げています。警察も法律も頼れない中で、少年がどう判断し、行動するのか——その心理描写が実に秀逸です。 自営業の自分としては、母親の必死の姿も印象に残りました。家族を守ること、社会的な制度の限界、そして個人の良心と法律の齟齬といった、大人でも考え込んでしまう問題が丁寧に描かれている。エンタメ性と思考の深さのバランスが心地よいんです。 唯一、結末への向かい方がやや急展開に感じる部分もありますが、それを差し引いても充分な価値がある作品。同じ著者の他の本も気になってきました。

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