国宝 下 花道篇

国宝 下 花道篇

吉田修一

出版社:朝日新聞出版 出版年月日:2021/09/07

朝日新聞出版 | 2021/09/07

4.00
本棚登録:7人

みんなの感想

『国宝 下 花道篇』を読み終わりました。正直なところ、上巻を読んだ時点では「果たして下巻でどう着地させるのか」と少し懐念していたのですが、見事に杞憂でした。 芸術選奨文部科学大臣賞と中央公論文芸賞のW受賞という実績に惹かれて手に取ったのですが、その期待値を完全に超えてくれました。舞台役者という職業の本質を追求しながら、同時に1960年代から高度経済成長期の日本という時代背景を丁寧に描いていく構成の妙に引き込まれました。 エンジニアである私の視点からも興味深かったのは、職人技を磨き続けることへの執念です。立花喜久雄をはじめとする男たちが、自分の道を究めようとする姿勢は、技術を深掘りし続けるエンジニアの心境と通じるものがあります。人生をかけて何かを追求することの尊さと辛さが、ここまで説得力を持って描かれた作品は珍しい。 エンターテイメント性と文学的深さのバランスが絶妙です。安心して推薦できる一冊です。

下巻を読み終わって、しばらく言葉が出ませんでした。 上巻から続く立花喜久雄の人生の軌跡。任侠の世界に生まれながら、舞台という異なる世界へ導かれていく男の葛藤と執念が、これほどまでに深く胸に響くとは思いませんでした。著者の描く昭和の時代背景、登場人物たちの複雑な人間関係、そして何より芸術に命を賭ける男たちの姿勢——すべてが緻密に編み込まれています。 慎重に本を選ぶ私ですが、この作品については心から読んでよかったと感じます。『悪人』や『怒り』同様、著者の真骨頂とも言える傑作です。長編だからこそ描ける人物の成長、時代との相互作用、そして人生という舞台での美学。会社員として日々を過ごす私にとって、これほど「何かに没頭する」ことの尊さが伝わってくる物語はありません。 若干、中盤の登場人物の多さに戸惑うところもありましたが、それを差し引いても傑出した作品。上下巻、時間をかけてでも読む価値は十分にあります。

『国宝 下 花道篇』を読み終わりました。上巻に続く圧倒的なエンターテイメント性に引き込まれっぱなしでした。 任侠の世界に生まれながら、舞台という別世界に身を置くことになった立花喜久雄。彼の人生を追う中で、昭和という時代の流れと、芝居に生きる男たちの執念が見事に織り交ぜられています。1964年の長崎から東京へと舞台が移る中で、日本という国そのものが成長していく様が背景にあり、個人の運命と国家の歩みが重なっていく構成が素晴らしい。 何より感心したのは、複数の登場人物それぞれが一本の道を究めようともがく姿勢です。教員という職業柄、若者たちの成長を見守ることが多い身ですが、この作品を読んでいると、技を磨き、人生に向き合う男たちの真摯さに心打たれます。 確かに長編で読み応えがありますが、その分だけ物語の深みに浸る喜びを感じさせてくれます。下巻だけでも十分な完成度がありながら、上巻まで含めた全体像を思い返すと、さらに味わい深い作品だと感じます。気軽に楽しめるエンターテイメント超大作として、多くの読者にお勧めできる一冊です。