国宝 下 花道篇
朝日新聞出版 | 2021/09/07
みんなの感想
下巻を読み終わった時、思わずため息が出ました。これは単なる娯楽小説ではなく、人生そのものについて深く考えさせられる作品です。 1964年の長崎から始まる立花喜久雄の人生を追いながら、日本という国の成長とともに描かれていく様が本当に素晴らしい。任侠の世界に生まれながらも、舞台の上で自分の人生を切り開いていく男たちの姿には、どうしようもなく惹きこまれてしまいます。 上巻から積み重ねてきた物語が、下巻で一つの答えに向かっていく過程はページをめくる手が止まりません。芝居だけに生きた男たちが、何を求め、何を失い、何を得たのか。その過程で感じる喜びや葛藤、美しさと儚さが、これ以上ないほど繊細に表現されています。 家事をしながら、細切れ時間で読んでいたのですが、最後は徹夜してでも続きが気になってしまいました。680ページ近い大作ですが、決して長さを感じさせません。こういう作品に出会えるから、読書って本当に素敵だなと改めて思います。
『悪人』『怒り』を読んだ時の興奮を期待して手に取ったのですが、正直なところ、今作はちょっと期待値を下回ってしまいました。 下巻ということもあって、上巻を読んでいない状態での評価になってしまったのが申し訳ないのですが、登場人物たちへの感情移入が難しく感じられました。芝居に人生をかける男たちの執念や美学については理解できるのに、どうにも物語に引き込まれきれないというか。1964年の長崎から東京オリンピック後への時間軸は興味深いのですが、その歴史的背景が物語とどう絡み合うのかが、今ひとつぼんやりしてしまったんです。 書きぶりの密度は相変わらず凄いのですが、ボリュームに対して物語としての満足度がバランスしていないように感じました。自営業で忙しい身としては、やはり没入感がないと長編に時間を割く気力が湧きません。話題作ですし、上巻から読めば違う感覚かもしれませんが、純粋な読書体験としてはもう少し工夫があってほしかった。
『国宝』下巻は、本当に引き込まれた。上巻の衝撃から続く物語だが、ここまで壮大なスケールで人間の執念を描き切るとは思わなかった。 長崎の料亭で生まれた一人の男が、日本の高度成長期を背景に、芸の道を究めていく過程——それは単なる成功物語ではなく、もはや一種の宿命のようにも思える。立花喜久雄という人物の周囲で揺れ動く人間関係の複雑さ、そしてそれでもなお舞台という絶対の空間へ向かう執念は、何度読み返しても心を揺さぶる。 教壇に立つ身として感じるのは、この作品が人生とは何かを問う深さだ。表面的なエンターテインメントを超えた、存在そのものへの問いかけがある。昭和という時代の息吹も随所に感じられ、日本の変化と人間の営みが見事に重なっていく。 下巻で初めて明かされる真実、そして最後の場面の重みは格別だ。芸術選奨をダブル受賞した理由がよく分かる傑作である。
話題作だったので手に取りましたが、正直なところ期待と現実のギャップに戸惑ってしまいました。 舞台となる昭和の日本、特に任侠の世界と歌舞伎という異なる文化が交錯する設定は非常に興味深いのです。一人の男が二つの世界に揺らぎながら生きていく葛藤、そこに時代の流れが重なっていく...素晴らしい物語の骨組みだと思います。 しかし、下巻である本作を読んでいて感じたのは、物語が長く展開される割に、登場人物たちの内面の深さが今ひとつ伝わってこない点です。派手な場面描写や人間関係の複雑さは丁寧に描かれているのに、彼らがなぜそこまで執着し、何を求めているのか、その本質的な部分がぼやけているような気がしてしまいました。 受賞作品ということもあり、より深い感動を期待していたのかもしれません。悪い本ではないのですが、仕事の息抜きに読むには長く、心を揺さぶるには物足りない、そんな微妙な位置付けの一冊となってしまいました。
『国宝 下 花道篇』を読み終わりました。正直なところ、上巻を読んだ時点では「果たして下巻でどう着地させるのか」と少し懐念していたのですが、見事に杞憂でした。 芸術選奨文部科学大臣賞と中央公論文芸賞のW受賞という実績に惹かれて手に取ったのですが、その期待値を完全に超えてくれました。舞台役者という職業の本質を追求しながら、同時に1960年代から高度経済成長期の日本という時代背景を丁寧に描いていく構成の妙に引き込まれました。 エンジニアである私の視点からも興味深かったのは、職人技を磨き続けることへの執念です。立花喜久雄をはじめとする男たちが、自分の道を究めようとする姿勢は、技術を深掘りし続けるエンジニアの心境と通じるものがあります。人生をかけて何かを追求することの尊さと辛さが、ここまで説得力を持って描かれた作品は珍しい。 エンターテイメント性と文学的深さのバランスが絶妙です。安心して推薦できる一冊です。
下巻を読み終わって、しばらく言葉が出ませんでした。 上巻から続く立花喜久雄の人生の軌跡。任侠の世界に生まれながら、舞台という異なる世界へ導かれていく男の葛藤と執念が、これほどまでに深く胸に響くとは思いませんでした。著者の描く昭和の時代背景、登場人物たちの複雑な人間関係、そして何より芸術に命を賭ける男たちの姿勢——すべてが緻密に編み込まれています。 慎重に本を選ぶ私ですが、この作品については心から読んでよかったと感じます。『悪人』や『怒り』同様、著者の真骨頂とも言える傑作です。長編だからこそ描ける人物の成長、時代との相互作用、そして人生という舞台での美学。会社員として日々を過ごす私にとって、これほど「何かに没頭する」ことの尊さが伝わってくる物語はありません。 若干、中盤の登場人物の多さに戸惑うところもありましたが、それを差し引いても傑出した作品。上下巻、時間をかけてでも読む価値は十分にあります。
『国宝 下 花道篇』を読み終わりました。上巻に続く圧倒的なエンターテイメント性に引き込まれっぱなしでした。 任侠の世界に生まれながら、舞台という別世界に身を置くことになった立花喜久雄。彼の人生を追う中で、昭和という時代の流れと、芝居に生きる男たちの執念が見事に織り交ぜられています。1964年の長崎から東京へと舞台が移る中で、日本という国そのものが成長していく様が背景にあり、個人の運命と国家の歩みが重なっていく構成が素晴らしい。 何より感心したのは、複数の登場人物それぞれが一本の道を究めようともがく姿勢です。教員という職業柄、若者たちの成長を見守ることが多い身ですが、この作品を読んでいると、技を磨き、人生に向き合う男たちの真摯さに心打たれます。 確かに長編で読み応えがありますが、その分だけ物語の深みに浸る喜びを感じさせてくれます。下巻だけでも十分な完成度がありながら、上巻まで含めた全体像を思い返すと、さらに味わい深い作品だと感じます。気軽に楽しめるエンターテイメント超大作として、多くの読者にお勧めできる一冊です。