文子の本棚
エピクロスの処方箋

エピクロスの処方箋

夏川草介 水鈴社 2025年9月29日

感想

前作『スピノザの診察室』が良かったので、期待して手に取りました。医師でありながら哲学的に人の生と死を問い続ける主人公の姿勢は興味深いのですが、今回はその思想がやや前に出すぎていて、物語としての流れが少し窮屈に感じてしまいました。 患者さんとの関わりを通じて人生について考える場面は素敵なのですが、会話が哲学的な議論に偏ってしまい、もう少し人間らしい温かみが欲しかったというのが正直なところです。気軽に読むエッセイのような楽しみを求めていた私には、思想的な重さが前回以上に強くなっていて、読み進むのに少し疲れてしまいました。 エンターテインメント作品としての魅力も前作にはあったのに、今回はそのバランスがうまく取れていないように思います。だからこそ余計に残念で、続きを読む気はあるのですが、もう少し肩の力を抜いて、登場人物たちの人間的な部分にも光を当てていただきたかったという感じです。