春宵十話

春宵十話

岡 潔

出版社:KADOKAWA 出版年月日:2014/05/24

KADOKAWA | 2014/05/24

5.00
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みんなの感想

岡潔という人物をこれほど深く理解できる著作に出会えたのは、本当に貴重な経験だった。世界的な数学者でありながら、同時に日本の精神文化について深刻な危機感を抱いていた思想家という、二つの顔を持つ人間の本質がここには凝縮されている。 特に印象的だったのは、情緒と理性のバランスについての論考だ。戦後の急速な西欧化の中で、日本人が失いかけている「情緒」の重要性を、数学者ならではの論理的な説得力で語られている。自然に根差した日本文化の叡智を失うことの危機を警告する彼の言葉は、現代社会を生きる私たちにも重くのしかかってくる。 柔らかくありながらも骨太な思考が随所に感じられ、読んでいて何度も立ち止まって考えさせられた。人生経験を重ねた今だからこそ、この本の真の価値が理解できるのだと感じる。中沢新一の解説も秀逸で、岡潔の思想をさらに深める手助けになっている。迷わず多くの人に勧めたい一冊だ。