直人の本棚
感想

本屋大賞のノミネート作と聞いて手に取った一冊ですが、伊坂幸太郎の「最高の読後感」というキャッチコピーに偽りなしでした。 収録された短編たちは、どれも「逆転」をテーマにしながら、私たちが無意識のうちに抱いている先入観をするりと脱がしていく。カンニングから始まる戦略、運動音痴の少年が立ちはだかる壁、スポーツ少年たちの敗北と再起—どれも一見地味な題材なのに、読み終わると世界の見え方がぐっと変わる。これが伊坂幸太郎の真骨頂だと改めて感じました。 特に印象的なのは、各編が完全に独立した物語でありながら、全体として一つの思想へ収束していく構成の妙です。仕事で疲れた日々の中で、「敵は先入観である」というシンプルなメッセージが、ここまで説得力を持つとは。 20年目のデビュー作とのことですが、確かにこれは勝負作です。久しぶりに心が軽くなる読み終わり方をしました。会社員として惰性で動きがちな自分への警鐘としても、いい一冊となりました。

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