直人の本棚
映画ノベライズ ブラックナイトパレード

映画ノベライズ ブラックナイトパレード

七緒 / 中村 光 / 鎌田 哲生 / 福田 雄一 集英社 2022年12月20日

感想

最近、映画化作品の原作本を読む機会が増えているが、この『ブラックナイトパレード』は映画ノベライズながら実に良くできている。失敗続きの冴えない男が、黒いサンタに強制的に北極へ連れ去られるという荒唐無稽なプロット。普通ならば警戒するところだが、読み始めるとそのテンポの良さと、キャラクターの魅力に引き込まれる。 人生の停滞感を抱えた主人公に感情移入しつつも、奇想天外な世界観が現実の息苦しさを吹き飛ばしてくれる。個性的な登場人物たちとの掛け合いからは、職場の人間関係についても考えさせられた。仕事とは何か、やり甲斐とは何かといった問い掛けが自然に織り込まれており、決して軽い娯楽作ではない深さがある。 58年生きてくると、得体の知れない不安を感じることも多いが、本書はそうした日常の閉塞感をユーモアとファンタジーで解き放つ力を持っている。映画も気になるが、文章でしか味わえない余韻もある。心が凝り固まった時に手に取りたい一冊だ。