直人の本棚
窓から逃げた100歳老人

窓から逃げた100歳老人

ヨナス・ヨナソン / 柳瀬尚紀 西村書店(新潟) 2014年6月21日

何とも愉快な一冊に出会ってしまった。100歳の誕生日パーティから逃げ出した老人アランが、波乱万丈の人生を引きずりながら、さらに奇想天外な冒険へと突き進む。この設定だけで既に面白さが伝わってくるではないか。 スウェーデンの作家による本作は、20世紀の歴史的大事件の舞台裏にこの主人公がいたという、何ともアンビリーバブルな設定が秀逸だ。フランコやスターリン、毛沢東まで登場するという歴史冒険小説の大らかさ。還暦を過ぎた私たちにとって、人生の重みを笑い飛ばす爽快感は格別である。 物語は時間軸を行き来しながら進む。現在の逃亡劇と過去の歴史的事件が交錯する構成は、一見複雑だが、読み進むうちにその巧みさに引き込まれる。社会人として堅い仕事に従事する身としては、こうした奔放で予測不可能な展開が心地よい。暗くなりがちな昨今だからこそ、かような痛快なコメディが必要なのだろう。 翻訳のこなれ具合も良く、日本初上陸というのも納得できる傑作である。人生の後半戦を迎えた多くの読者にお勧めしたい一冊だ。